政治も経営と同様に、何事かを「決める」仕事である。それにもかかわらず、衆院小選挙区の一票の格差是正をめぐる与野党の選挙制度改革協議は合意に至らず、何の是正処置も講じないまま、衆院選挙区画定審議会(区割り審)設置法に規定された首相への区割り案勧告期限(2月25日)を越えてしまった。平たく言えば、立法府が法を守らず、前代未聞の違法状態に突入してしまったのである。

違法状態で選挙ができるのか

 区割り審設置法は、10年に1度の国勢調査の結果を踏まえて小選挙区の区割りを見直し、一票の格差が2倍以上にならないように改定を行うと定めている。

 昨年2月に公表された2010年国勢調査の結果によると、衆院小選挙区の一票の格差は最大で2.52倍になる。区割り審設置法に従えば、遅くとも今年の2月25日までには新たな区割り案が首相に勧告されていなければならなかった。

 しかも、問題はそれにとどまらない。昨年3月には、最高裁判所が最大格差が2.30倍だった2009年の衆院選について、憲法が定める平等原別に照らして「違憲状態にあった」との最終判断を示し、47都道府県に先ず1議席ずつ与える「1人別枠方式」の廃止を求めたのである。

 これによって、問題のありかが、一票の「格差」にあるのではなく、憲法が定める法の下での平等原別、すなわち、「1人1票を実現する」ことにあるとの認識が急速に広がった(1人1票問題については、以前にも当コラムで論じたことがあるので参照してほしい)。

 このような本質的な問題提起が司法府からなされたにもかかわらず、立法府はこの問題についてはこの一年を無為に過ごし、ついには前例のない違法状態に陥ってしまったのである。「物事を決められない政治」の混迷状態は、ここに極まった感がある。

 仮にこの状態で衆議院が解散されたら、「選挙無効」の司法判断が出ないとは限らない。そもそも、違法状態のまま選挙ができるのだろうか。大いに疑問なしとしない。与野党は、党利党略を離れて、最高裁の問題提起を真剣に受け止め、一刻も早く違法状態の解消に注力してほしい。法を無視したままでは、立法府の名が泣くであろう。