違法性の認識なんて持ちようがない

熊谷  違法性の認識という点で言うと、あの会計処理は、監査法人による監査を経ていました。監査法人にお墨付きをもらっているわけです。ライブドアの公判で明らかになっていますが、担当の会計士は未だにあの会計処理は合法だと主張しているのですよ。それにもかかわらず、堀江さんはじめ当時のライブドアの経営陣に違法性の認識があったなんて無理があるんですよ。

 我々は、当時、会計の専門家である会計士に問い合わせ、合法だとお墨付きをもらい、有価証券報告書を作成した。つまり違法性の認識なんて持ちようがないんです。

藤沢  ふつう、違法だと思っていたらやらないですよね。割に合いませんから。それに、多くの場合、損失を隠して経営者の保身を計ったり、銀行から融資を引き出すために、粉飾決算をするわけですが、ライブドアの場合は利益そのものは出ていて、その利益をどこに書くかの問題だったわけで、かなりめずらしいというか、他と違うものでしたね。ふつうの粉飾事件と違って、ぜんぜん切羽詰まってなかった。企業の継続性に関しては全く問題なかったわけです。そういう状況で、分かっていて違法行為をしようとはふつうは思わないでしょう。

熊谷  それがいきなりの強制捜査で、経営陣が次々と逮捕され、上場廃止にされてしまいました。その後も、経営陣は様々な訴訟を抱え、みな財産を没収されてしまったのです。

藤沢  自己株式の売買は、当然、インサイダー取引が簡単にできてしまうので、自己株式の取り扱いに関しては様々な規制があります。そういう意味で、ライブドアが間接的に出資しているファンドが、株式交換で買収した会社から、ライブドア株を買い戻して、そのライブドア株の売買をしていた、というのはやはり気持ち悪いところはあると思います。そういう意味で、証券取引等監視委員会や金融庁の検査が入ってもおかしくはなかったと思います。その検査で何らかの不正が見つかれば処罰の対象になるだろうし、見つからなくてもトリッキーなスキームは解消するように言われた可能性はあります。

 しかし、いきなりの強制捜査で、経営陣を次々と逮捕し、挙句の果てに上場廃止という事態は、明らかにやり過ぎだったと思います。しかも、検察の主張は、自己株式のインサイダー取引でも何でもなく、自己株式を売って儲けた金を、本来は資本取引として扱うべきなのに、利益として損益計算書に載せていたから粉飾である、という会計上のテクニカルなことだったのです。