いかなる理由であっても、キャリアに空間期間があると再就職するのは難しい。筆者は、現在就業中の親、解雇された親、育児に専念している親の3つのパターンについて、再就職の困難さを調査した。すると、母親と父親のいずれの場合も、育児で仕事を離れた人がもっとも厳しい状況に置かれている事実が判明した。


 キャリアの空白期間を経て再就職するのは、簡単ではない。では、解雇されてしばらく失業している求職者と、育児に専念するために離職した求職者では、どちらがより厳しい状況にあるのだろうか。私の調査では、後者のほうが深刻であることが判明した。

 私が最近実施した調査によって、一時的に育児を専業としている求職者に対して、多くの雇用主が偏見を抱いていることがわかった。解雇された後に同期間失業している求職者のほうが、むしろ好ましいと考えているのだ。

 この調査の基盤となっているのは、失業中の求職者が新しい雇用先を見つけようとするときに直面する難題に関する、既存の調査だ。なぜ離職して育児に専念することを決めたかについては、これまでにさまざまな研究がある。一方、こうした親が職場に復帰する決意をしたときに何が起きるかについては、既存の調査では明確にならなかった。

 私は自分の調査のために、実際の求人先に架空の履歴書を送付した。一連の履歴書は求職者が次の3タイプに分かれるように作成した。

 (1)現在雇用されており、雇用の空白期間がない求職者
 (2)失業中の求職者
 (3)育児に専念している求職者

 また男性か女性の名前を使って、求職者の性別が見分けられるようにした。全履歴書の文面から、架空の求職者全員が親であり、同じレベルの経験、同じ転職の回数、同じレベルのスキルを有していることを暗示した。雇用に空白期間がある求職者については、離職期間を1年半にした。

 2015年から2016年の数ヵ月間、私は合計3374通の履歴書を、米国50市にある求人情報案内に送付した。希望する職種は会計士、金融アナリスト、ソフトエンジニア、人事マネジャー、それにマーケティング・ディレクターとした。続いて、面接または詳細情報の要請を受けた(「折り返しの連絡」があった)のはどの求職者か、追跡調査した。

 その結果、再就職しようとする親には、キャリアに空白期間があるという理由で、いかに厳しいペナルティーを科せられるかが明らかになった。具体的な数字を挙げると、連絡があった比率は、現在職に就いている母親が15.3%、失業中の母親が9.7%だったのに対し、育児に専念している母親は4.9%だった。

 父親についても、結果は同様だった。現在職に就いている父親の14.6% 、失業中の父親の8.8%に連絡があったのに対し、育児に専念している父親の比率はわずか5.4%だった。

 まとめると、育児に専念している親に連絡が入る可能性は、失業中の親の半分程度、雇用されている親の3分の1程度だった。

 雇用主はなぜ、育児に専念している親と面接しようとしないのだろうか。