マンションは「共有部分」は管理組合で
「専有部分・家財」については各世帯で地震保険をかける

 多くの人は、マンションを終の棲家として購入しているはずです。被災時でも、住民の費用負担をできる限り抑え、安心してマンション修繕や再建に至るためには、前もって資金準備が必要です。それにはやはり地震保険のほかに、有力な手立てが見つからないのが現実です。

 分譲マンションでは、地震保険を役立てるために知っておきたいことがあります。分譲マンションは、「専有部分」と「共用部分」で構成されており、通常は柱や床から内側の各居室部分を「専有部分」、それより外側の躯体部分やエントランス、エレベーターなどが「共用部分」です。

 分譲マンションでは、専有部分は各世帯で、共用部分は管理組合でと、それぞれについて地震保険の契約をします。そして、地震保険における専有部分の損害認定は、建物の共用部分である躯体、つまり主要構造部(基礎・柱・屋根・壁など)にどれだけの損害が生じているかで判定されるしくみ。そのため専有部分に損害がなくても、共用部分の損害に応じて保険金が支払われます。

地震で経済的ダメージを受けないためにも<br />「地震保険」に入っていた方がいいのはこんな世帯!清 水香(しみず かおり) 1968年東京生まれ。ファイナンシャルプランナー。学生時分より生損保代理店業務に携わるかたわら、FP業務を開始。2001年、代理店での10年間の 経験を生かし独立、のち(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。相談業務、執筆・講演なども幅広く展開、TV出演も多数。著書に『見直し以前の 「いる保険」「いらない保険」の常識』(講談社)、『こんな時、あなたの保険はおりるのか?』(ダイヤモンド社)、共著に『災害時絶対に知っておくべき 「お金」と「保険」の知識(ダイヤモンド社)』ほか多数。 日本経済新聞電子版「自動車保険」、オールアバウト「火災保険の選び方」などで連載中。 所属先:(株)生活設計塾クルー http://www.fp-clue.com/

 逆に共用部分に損害が生じなかったけれども、専有部分のみが地震火災による被害が起きたといった場合なら、専有部分が個別に損害認定されて保険金が支払われるしくみになっています。

 なお、各戸室内に収容する家財については、各世帯で建物とは別に契約をします。家財は実状に応じて、あるいは家族構成や世帯主の年齢等を目安にして火災保険金額を決め、これに家財の地震保険をセットします。

 共用部分については、管理組合で契約している火災保険契約にセットして契約します。

 500世帯弱が入居する大型分譲マンションで試算してみましょう。建物全体の評価額は60億円程度ですから、建物を解体して建てなおすと60億円かかります。

 建物のうち、共用部分の評価額は約12億円。よって共用部分の火災保険金額は12億円となり、地震保険の保険金額はその50%の6億円となります。地震によってマンションが全損と認定されれば、管理組合は6億円の地震保険金を受け取ることができます。

 6億円の補償を得るには、マンション管理組合は地震保険料を年間約91万円支払うことになりますが、一戸当たりでは2000円弱の年間保険料負担です。

 もちろん、共用部分の評価額の半分にあたる6億円の地震保険金だけで、マンションを建て直すことはできませんが、もし解体・建て替えの合意形成に至った時には、個々の追加負担を大きく減らすことができます。

 たとえばこのマンションが全壊し、再建費用が前述の60億円とすると、それを単純の500世帯で割ると一世帯当たり1200万円の負担になります。一方、共用部分、専有部分ともに地震保険に加入していた場合、一世帯当たりの負担は580万円減少するので、自己負担は620万円になるのです。(※専有部分の地震保険金額は500万円とする)

 一戸建てなら、家族で話し合えば方向性は決まります。しかし、複数の世帯が住まう分譲マンションで、合意形成を図るのは平時においても簡単なことではありません。ましてや被災時では、さらに困難が予測されるのではないでしょうか。建替えや修繕をできる限り困難なものにせず、住民がみな納得して合意に至るため、事前の経済的備えは、共同住宅こそより重要な要素ではないかと思います。


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