成長する人は「経験」から学んでいる――。これまで1万2000人以上の「振り返り」をサポートしてきた行動変容の専門家・永谷研一氏が明かす、成長し続け、目標達成する人の共通点とは? 新刊『月イチ10分「できたこと」を振り返りなさい』から、そのポイントをピックアップして紹介していきます。今回は、成長し続ける「自律型人材」を育てるために必要なことについて解説していきます。

成長できる人は、ワクワクできる人

 前回の記事では、「自己肯定感が高いと、自分と向きあえて成長できる」というお話をしました。しかし、自己肯定感を高めるメリットは「自分と向きあえる」ことだけではありません。自己肯定感を高めると、行動・挑戦する意欲も高まります。人間はロジカルに理解しただけでは動けません。行動には「感情」も大切な要因です。ポジティブになれば、行動を主体的に変化させ、何事にも挑戦したくなります。

 子どもの頃を思い出してください。何かができるようになると、嬉しくなって「もっとやりたい、やってみたい!」と感じたことはありませんか? たとえば、なわとびの基本である前跳びができるようになったら、今後は後ろ跳び、さらには二重跳びと、どんどん新しい跳び方にチャレンジしていったと思います。嬉しい、楽しい、ワクワクする……こうしたポジティブな感情があると、どんどん行動したくなるのです。こうした人間の性質を、行動科学で「強化」と言います。人間は、「よい結果が得られることは、もっとやろう」とするのです。

厳しく叱っても、人は成長しない

 一方で、負の感情は、行動する意欲を奪います。「また失敗しそうだな……」「成果が出なかったらどうしよう……」「失敗したら恥ずかしいな……」これらの感情では、前向きな行動やチャレンジができません。

 厳しく叱ったり、プライドを傷つけるまで凹ませる研修プログラムを見たことがありますが、あのような人材育成はまったく意味がありません。「また失敗したらどうしよう……」「また怒られるかもしれない。嫌だな、やりたくないな……」と、負の感情が先に立ち、行動を変えられないからです。もし行動が変わったように見えていても、それは一時的なものに過ぎません。怒られたくないから変えているだけで、自らの意思ではありません。 

 私自身、これまで多くの人材育成に携わる中で、まず「自己肯定感」が高い状態をつくらなければ行動は変えられないと結論づけました。「いいことがありそうだから、やってみたい」と思わなければ、人は動かない。当たり前ですが、これは本当に大切なことです。誰もが成長するためには、何よりまず自己肯定感を高め、ポジティブで前向きな感情をつくり出す必要があるのです。自己肯定感を高めることで、自分の課題と向き合う気持ちが持て、積極的に行動していけます。

 では、どのように自己肯定感を高めていけばいいのか? そのために大切なことは「できたこと」を見つめることです。「できたこと」を見つめると、自然に自己肯定感は高まっていきます。自分自身の振り返りはもちろん、人材育成でも「できたこと」を見てあげることで、自ら考え、行動する人材を育てられるのです。

 拙著『月イチ10分「できたこと」を振り返りなさい』では、こうした「できたこと」から振り返る方法について解説しました。中学生からビジネスパーソンまで、驚くような成長を実感しているメソッドです。仕事、スポーツ、資格試験、TOEICなど、さまざまな分野の目標達成・自己実現に効きます。ぜひ、こちらもご参考いただけますと幸いです。