キャリア権が労働者を応援する

 キャリア権とは、自発的に行動する労働者を社会全体で応援する仕組みを整えようという考え方でもあります。もちろん本人には自発的に行動し、常に成長を続ける努力をしていくことが求められます。ただ、こうした努力を本人が続けていけば、それを社会全体で応援していくという環境が、キャリア権などの考え方が普及していくことで徐々に整っていくのではないでしょうか。

切り札は「越境学習」

 では、具体的な戦術として、会社に在籍したまま他責的な傾向に陥ることを避けるにはどうしたらいいのでしょうか。筆者は、その切り札は「越境学習」であると思います。越境学習とは、成功の法則2で紹介したとおり、自分の職場以外での学習に参加すること、特に社外での学習に参加することを意味します。

 なぜ、越境学習に効果があるのでしょうか。筆者はその最大の理由として、越境学習には自発的な人々が集まり、お互いに刺激をしあうという効果を挙げたいと思います。

 社外で勉強したからといって、それが直接的に評価され、社内で昇給や昇進に結びつくわけではありません。むしろ、「社内の仕事が忙しいのに外で勉強するなんて何を考えているんだ」と嫌味を言われることもあります。それにもかかわらず、社外で勉強しようというのですから、越境学習をする人たちは自発的に何らか自分の専門性を高めようと思っているわけです。

 人間は、他者の影響を受けるものです。間近に自発的な人を多く見ていれば、やはり自分も自発的でなければと刺激を受けるのではないでしょうか。これだけでも、越境学習を行なう価値があると思います。

 しかもそれだけではなく、越境学習によって社内の同じ職場だけではわからない多様な価値観、最新の情報を得ることができます。不確実で環境の変化が激しい時代に、社内の同じ組織文化に馴染んだ人とだけしか付き合わなければ、柔軟に環境変化に対応できなくなってしまうでしょう。