中古成約事例から分析
移ろいやすい「億ション」市場の今

いまどき「億ション」人気の裏側、激しい浮沈を見抜く3つの視点現在、億ションの売れ行きはいいが、中には売れ残って閑古鳥が鳴く物件も。億ションを取り巻く市場は移ろいやすいのだ。一般人が憧れる億ションの「今」を探る

 2018年現在、億ションの売れ行きはいい。しかし、新築の億ションは売れ残って閑古鳥が鳴くことも多い。億ションを取り巻く市場は移ろいやすいのだ。そんな市場でのセオリーを理解しておくと、比較的高額な物件の選定で間違うことがなくなる。都区部の平均価格が7000万円超に高騰してきたマンション市場だからこそ、そうした億ションのセオリーが与える影響範囲は大きくなっている。

 2017年の新築マンションの平均価格は5908万円(都区部は7089万円)、近畿圏で3836万円と高値圏が続いている。億ションの供給戸数は首都圏が1928戸で前年比50%以上増えている(いずれも不動産経済研究所調べ)。

 億ションが現在売れているとはいえ、このハイエンド(最高級)市場は不安定である。リーマンショック直後などは、高額物件ほど売れない事態が起こった。その浮き沈みは中古の成約戸数が市場を正確に反映している。

 2010~12年は年平均120戸の中古成約事例数が報告されている。アベノミクスが始まった2013年以降は年々増え、2017年にはその4倍の518戸に達している。これは不動産流通業界で成約報告された戸数なので、実際にはその3倍くらい成約しているものと思われる(グラフも成約戸数を3倍した推計戸数にしている)。

 新築マンションの億ション供給戸数も2010~12年は年平均767戸、2013年以降平均はその190%、1428戸に倍増している。しかし、新築が売主側の都合で価格設定されて販売されているのに対し、中古の成約戸数は需給が一致して取引された数なので、中古の方が市場の実態を表していると考えられる。中古は同じ期間で成約戸数を比較すると288%に増えている。これらの事実から、2013年以降は億ション市場では中古よりも新築の方が売れ行きは良いと想像される。

◆図表1:新築・中古の億ション戸数の推移

いまどき「億ション」人気の裏側、激しい浮沈を見抜く3つの視点(出典)不動産経済研究所、東日本流通機構からスタイルアクト作成
拡大画像表示