「ツノが生えた犬」でも
「犬」と認識できる
AIの「水増し学習」

 AIの学習を支えているのは、大量のデータと大量の計算です。
 データ量が不足していたり、また、十分な計算を行っていなかったりすると、AIは「賢くなる」ことができません。

 そして、ここがAIの凄いところなのですが、AIは学習過程で、学習用データを水増しするためにわざと情報の一部を加工することがあります。

 画像の場合は、わざと少し回転させたり、言葉であれば、わざと単語の語順をバラバラにしたり、といった具合です。

 時には、学習用データを加工するだけでなく、ニューラルネットワーク(NN)の一部のフィルタをわざと機能しなくして、その状態でも正しい認識が行えるように学習を行うこともあります。

 このような学習方法を、ここでは便宜上、「水増し学習」と呼びますが、この「水増し学習」によって、多少の間違ったデータでも認識できるようになるという利点が生まれます。

 わかりやすい例で言うと、たとえ「犬」にツノを着けたり、羽を着けたりしても、「水増し学習」をしているAIであれば、「それは『犬』ですね」という答えを導き出すことが可能になるわけです。

 そして、私たち人間も、ツノが生えている犬や、羽が生えている犬を見ても、きちんと「犬」と認識することができます。
 すなわち、「水増し学習」は、AIがより人間らしく振る舞うための一手段ともいえます。