「特攻隊」もやはり軍事的な戦略の一つですが、「最後の1人になって、玉砕するまで闘う」ことは、精神力の強さや美徳であったとしても、戦略方法としては決して効果のあるものではありません。通常、戦力の20%程度がやられた場合は、撤退するのが費用対効果面でも優れているからです。

 このように、軍事的にも、疾病対策に関しても、有効だとは思えない方法で、日本は常に危機管理を行ってきたのです。科学的根拠に基づかない「精神論」で、危機管理を行っていると言い換えることができるかもしれません。

 しかし、根拠なき政策は次第にメッキがはがれてきます。当然のことです。ここで登場するのが、「想定外」という言葉です。

 これは、読んで字のごとく「想定していたシナリオ以外のことが生じた」ということですが、科学的根拠に基づかず、思いつきの危機管理政策を行っている限りは、たくさんの「想定外」の出来事があらわれてきます。あまりに想定外が多すぎて、聞いている私たちもいい加減うんざりです。

人為的につくられた「想定外」が
国民を危険にさらしている!

 これまで述べた科学的根拠を欠いた危機管理「精神」のほか、日本人の特性として、「寝た子を起こすな」という考えがあります。これが、状況をさらにやっかいなものとするのです。「悪い状況を口にすると、実際にその不幸が起こる」という、言霊信仰のようなものでしょう。

 この考えでは、すべて都合の悪いことは「想定外」になってしまいます。もともと想定していないことに関して、対策など立てられるはずはないのですが、それにしても、あまりに人為的な「想定外」がつくられているように感じます。