こだわり蕎麦屋めぐり
【第18回】 2012年3月13日 鎌 富志治 [夢ハコンサルティング代表]

二子玉川「宇奈根山中」――本格の天ぷらコースの締めに江戸蕎麦。大人の贅沢を味わえる店

天ぷらの名店、銀座「天一」で修業した本格の天ぷらコースを心ゆくまで味わって、締めには手打ち蕎麦の群雄「本陣房」で学んだ江戸風情の二八蕎麦。こんな贅沢な店に行かない手はないだろう。

揚げたての天ぷらをカウンターで堪能
それが蕎麦屋で味わえるから人が集まる

 二子玉川駅から、少し離れた住宅街の中にある「宇奈根山中」。歩いて行くには少し距離があるため、客の多くはタクシーで「山中」に急ぐ。タクシーに乗ってまで、と驚くかもしれないが、この店の天ぷらと手打ち蕎麦にはその価値があるようだ。

2004年に天ぷらと江戸蕎麦の店として誕生した「宇奈根山中」。モダンなギャラリー風の造作で、蕎麦屋のイメージからはほど遠い。開店から8年を経た今でも、新しさを感じさせるコンセプトの店だ。

 店は住宅街の中に溶け込むようにあって、玄関に暖簾がないから、客は通り過ぎてしまうこともある。建物自体はモダンなデザイン様式で、全体が漆黒の塗装。知らない人は、およそ、蕎麦屋だとは思わないだろう。

 店内の天井はロッジのような広々とした空間造作にしてあって、初めて訪問する客は、まるで別荘にでも来たように感じることだろう。

 山中さんが天ぷらと手打ち蕎麦の店、「宇奈根山中」を興したのは2004年。生まれ育った土地に自宅と蕎麦屋の店を隣接して建てた。

「最初に開店したときには、近所の方が全く近寄ってこなかった。きっと、蕎麦屋にも天ぷら屋にも見えなかったのでしょう」と亭主の山中宏介さんが、トレードマークの顎鬚をつまみながら笑って言う。

熱々の天ぷらを味わってもらうよう、ゆったりとしたカウンターが置かれている。小上がりでの会食用に4人席が並ぶ。大人数なら、テーブルを寄せて宴会席を作ってくれる。

 山中さんの天ぷらは、19歳から9年間、あの名店の銀座「天一」で修業して身につけたものだから本格的なものだ。

 客の目の前で揚げた天ぷらを、そのまま食べてもらうために、カウンターは広めに取って、ゆったりしたものにした。

 天ぷらで客をもてなすには、「見計らい」といって、客の様子をつかみながら、天ぷら種を出す術が必要なのだという。だから、客の人数には気を遣う。小上がりも最大で10人の宴会を催すことができるが、そうなったらほぼ貸切にしてしまう。

 自分の天ぷらの揚げたてを味わってもらうためには、そのくらいの人数が限度なのだという。この丁寧な客扱いなら、お客を連れて接待に使いたくなる。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

鎌 富志治 [夢ハコンサルティング代表]

大手広告代理店で営業局長やプロモーション局長を歴任後、東京・神田須田町で手打ち蕎麦屋「夢八」を開店する(現在は閉店)。現在は企業経営コンサルタント、蕎麦コンサルタントとして活躍中。著書に『こだわり蕎麦屋の始め方』(ダイヤモンド社)がある。
◎ブログ:蕎麦の散歩道


こだわり蕎麦屋めぐり

酒と料理と極上の蕎麦。思わず誰かを連れて行きたくなる、五つ星のもてなしが楽しめる手打ち蕎麦屋。蕎麦が美味いのは当たり前、さらにはそこでしか味わえない料理ともてなしがある店ばかりを厳選。付き合いや接待に良し、大事な人と大事な日に行くも良し。店主がこだわり抜いた極上店の魅力とその楽しみ方を紹介する。

「こだわり蕎麦屋めぐり」

⇒バックナンバー一覧