120年を超える歴史を持つ農業機械メーカーのクボタは、積年の“自前主義”を捨て、海外M&Aに打って出た。その危機感を聞く。

クボタ会長兼社長 益本康男<br />「議論をする会社」に変えて<br />世界一への挑戦を続けたいPhoto by Hiroki Kondo/REAL

──昨年12月、ノルウェーの大手トラクター用作業機器メーカーのクバンランド社のTOB(株式の公開買い付け)に乗り出した。すでに、農機の海外生産比率は約20%に達したとはいえ、今回の買収は稲作向けではなく、畑作向けの新分野に踏み出すことになる。

 これまでクボタは、日常的にコメを食べる習慣を持つ国々、すなわち日本をはじめとしたアジア域内で、稲作向けの農機を開発・販売して事業を伸ばしてきた。

 一般的には、水田に関わる各種機械といったほうがわかりやすいかもしれない。この分野は、従来の延長線上で続けても、アジアでは農具の機械化がまだまだ進む。

 だが、世界に目を転じてみれば、農業は、小麦などの畑作が中心だ。クボタにとっては、大型の畑作機械の設計などを含めて“未知の世界”だが、「時間を買う」という意味で、あえて挑戦することにした。今回の買収は、5月か6月には完了すると見ている。

──かねて、今後10年以内に、現在約1兆円の連結売上高を約2兆円に増やす目標を掲げている。売上高の海外比率は約50%から約80%に引き上げ、向こう3年で機械事業は1兆円、水・環境システム事業と社会インフラ事業は4000億円規模を目指している。

 今回の買収のもう一つの側面としては、これまでの“自前主義”を捨て、社員の考え方そのものを変えるという狙いがあった。