上田 今回は、最近急成長を続けている「ブラジル」を取り上げます。

 ブラジルと言えば、私にはせいぜいサッカー王国、リオのカーニバル、コーヒー豆、アントニオ猪木くらいのイメージしかありません(笑)。竹中さんはブラジルに行かれたことがありますか?

竹中 私は2回ありますが、飛行機で24時間、丸1日もかかるので、「とにかく遠かった」というイメージが強いです。1度は往復6日間の旅程でしたが、ベッドの上で寝たのはわずか2回だけ。地球儀を見るとちょうど日本の裏側にあり、我々にとって「地球上で最も遠い国」です。だけどこの国、実は「非常に遠くて近い国」でもあるんですよ。
 
上田 「遠くて近い国」ですか…。 では、ブラジルとはいったいどんな国なのか、おさらいしてみましょう。ブラジルは、南半球最大の国で、面積は日本の約22倍もあります。人口は約1億8000万人ですが、実はその0.8%、約150万人が日系人なんです。

BRICsでは最注目の「資源大国」
「未来の石油輸出国」の呼び声も

1人当たりGDPの推移上田 ブラジルと言えば、「BRICsの一角」としても有名ですよね。BRICsとは、先進国に追いつく勢いで経済発展が著しい新興国。Bはブラジル、Rがロシア、Iがインド、そしてCが中国(チャイナ)です。

 ブラジル経済は、1998年の通貨危機で大きく落ち込みましたが、その後回復して2002年以降は急成長しています。国民の1人当たりGDPは8000ドル以上とロシアを追い抜き、中国とインドには大差をつけています。

 注目すべきは、資源国なので、原油高や米国のサブプライム問題の影響をあまり受けていないこと。主な資源は鉄鉱石ですが、昨年大油田が見つかり、今後は石油の輸出国にもなると予想されています。まさに経済は絶好調ですよね。

竹中 ブラジルは、徹底した金融引き締めで90年代のハイパーインフレを克服しました。日本と同じく、高度成長時代と「失われた10年」を両方経験している。その教訓を基に、経済を軌道に乗せてきたんです。