ここが変だよ日本の不動産取引
【第6回】 2018年4月9日公開(2018年7月13日更新)
バックナンバー 著者・コラム紹介
風戸裕樹

不動産を売却する際の「査定価格サービス」は、どうして実態よりも高めになりやすいのか?

不動産物件を売買するときに、インターネットの不動産サービスを利用すると、売り手はどちらかというと実態よりも高めの「査定価格」を知らされる傾向があります。一方で買い手は、販売中の不動産の「市場価格(相場)」が表示されないので、割高なのか、割安なのかが分かりません。シンガポールなどの状況と比べると、一般の売り手、買い手は不利益を被っているように見えます。

シンガポールでは、売り出し価格と市場価格を表示

 日本ならリクルートの「SUUMO(スーモ)」やLIFULLの「HOME'S(ホームズ)」などが有名ですが、シンガポールにも「SRX Property」や、「Property Guru」などの物件検索サイトがあります。SRXは英語だけでなく、日本語、中国語、インドネシア語、マレー語などにも対応しているので、ぜひ一度、アクセスしてみてはいかがでしょうか。

SRX Propertyの物件ページ SRX Propertyの物件ページ(日本語で表示も可能)

 シンガポールの物件検索サイトも、日本と同様に条件を入力すると、物件候補をリストアップしてくれるなど使い方は同じです。しかし、ドローンを飛ばして撮影した外観の映像や、全天球カメラで撮影して室内を360度で見られる画像なども掲載されていて、日本のサイト以上に充実した内容となっています。

 最大の違いは価格の表示方法でしょう。一般的に日本のサイトでは、物件の「売り出し価格」しか表示されていません。しかし、シンガポールの「SRX Property」では、「売り出し価格」に加えて、SRXで独自に査定した相場とも言える「市場価格(相場)」を「X値」として、一緒に公開しています。

 しかもX値は、過去3年間の推移をグラフ化して表示しているので、市場価格が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのかも一目瞭然です。売り出し価格とX値を比較すれば、お買い得かどうかを簡単に判断することができます。

 第5回記事でも紹介したように、シンガポールでは住宅売買の「成約価格(売却価格)」が公表されており、SRXの「X値」も成約価格のデータを使って算出しています。なんと計算方法も表示されており、かなり正確な「市場価格」が、売り手も買い手も分かるようになっています。

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>> 不動産の売却価格(成約価格)が見られないため、日本ではどんな不都合なことが起こっているのか?

日本では、市場価格が高めに出やすい

 一方の日本はどうなっているでしょうか。

 売り手に対しては、2015年頃から「市場価格」を推定する「価格査定サービス」が登場して、大都市圏では中古マンションの市場価格をネット上でも簡単に調べられるようになりました。例えば、HOME'Sを運営するLIFULLは「プライスマップ」という名称でサービスを提供しています。

 現在、日本の価格査定サービスが提供している「査定価格」は、各社とも価格データをどのように収集しているのかを明らかにしていませんが、「売り出し価格」を使って算出していると思われます。結果的に、実際の市場価格に比べてかなり高めの値になっている傾向があります。

 日本だと、売り出し価格に対して、成約価格は5−10%程度、価格が下落すると言われており、売り出し価格だけでは正確な査定ができないのです。日本の「査定価格」は「参考価格」程度と考えた方が良いかもしれません。

 日本では、「成約価格」は不動産会社しか見ることができません。東日本不動産機構などが運営する不動産会社向けの情報ネットワークシステム「REINS(レインズ)」に成約価格が登録され、同機構に加盟している不動産会社だけがデータを見ることができます。

 当初、価格査定サービスを提供する事業者の中には、レインズに加盟して「成約価格」を使って算出していたところもあったようですが、「成約価格を価格査定サービスに利用しないこと」とのお達しが出たことで、現在は使っている会社はないようです。

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不動産会社は、契約獲得へ“高値”乱発

 では、不動産の売り手は実際にはどうやって売り出し価格を決めているのでしょうか。売り手は、レインズの成約価格を見ることはできませんし、価格査定サービスもあまり正確ではないとなれば、不動産仲介会社が示した査定価格を参考に、最終的に売り出し価格を決めるしかありません。

 最近では売り手も、複数の不動産仲介会社に査定を依頼して、できるだけ高く売ってくれそうな会社と媒介契約を結ぶことが増えています。しかし、不動産仲介会社の中には、媒介契約ほしさに、無理に高めの査定価格を出している会社も多いと言われています。そうした高めの価格は、もはや合理的な市場価格とは言えません。売り出し価格が適正なのかどうかは、売り手自身も判断が難しいでしょう。

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日本でも成約価格をベースにした査定が増加

 とはいえ、日本でも「成約価格」を活用して、より客観的に「査定価格」を算出しようという動きは強まってきているように思われます。

 LIFULLでは、2017年8月から中古住宅を対象に、建物の状態などを詳しく調べた「住宅評価書」付きの物件の掲載を始めました。住宅評価書では、価格査定、建物検査、シロアリ検査、設備検査の4つの項目が全て基準を満たしていることをLIFULLが確認して認定するという仕組みです。

 このうち価格査定の認定は、国土交通省の外郭団体である公益財団法人不動産流通推進センター(理事長・伊藤博・全国宅地建物取引業協会連合会会長)が策定した「既存住宅価格査定マニュアル」を使った査定が行われているかどうかを確認するというものです。これは近隣にある同種の不動産の「成約価格」をベースに、一定の計算式を使って、客観的に査定価格を割り出すというものです。国交省では、価格査定マニュアルを普及させることで、査定価格に基づいて売り出し価格が適正に設定されることを期待しています。

 価格査定マニュアル自体、まだ完璧なものとは言えませんが、現在は不動産仲介会社の担当者の感性で適当に査定価格を決めたり、無理に高値を出そうとしたりするのに比べれば、ある程度は適切な査定が行われていると言えるでしょう。ただし、売り主に対しては価格査定マニュアルに基づいた査定価格を提示しますが、サイトには掲載をしていないので、買い主が相場をみることはできず、残念なところです。

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買い手は、市場価格(相場)を見つけにくい

 次に、買い手の環境も見ておきましょう。

 通常、買い手は不動産物件検索サイトにおいて希望のエリアや予算を入力して、物件を検索します。ただし、個別の物件ページにいくと、表示されているのは「売り出し価格」だけです。「市場価格」を並べて表示することはほとんどありません。

 先ほど、ネット上の価格査定サービスでは、多少の誤差はあるにしても「査定価格」を簡単に見られると書きましたが、これは売り手向けのサービスであって、別のサービスです。買い手が、2つの価格を比較するのは面倒な作業です。

 相場よりも割高に売っていると買い手がつきにくくなることが考えられるため、売り手に対する配慮として並べて表示していないのかもしれませんが、買い手にとっては分かりにくい対応です。そのため、買い手は、「査定価格」に対して「売り出し価格」がどのように設定されているのかは分からないまま購入しているケースが大半です。

 両手仲介であれば、売り手のエージェントでもある宅地建物取引士に、売り出し物件がお買い得かどうかを聞くしかありませんが、そもそも売り手のエージェントなので、買い手の立場になって答えてくれるかどうかは怪しいものです。

成約価格を一般人にも公開すべき

 結局、日本の売り手の多くは「市場価格」がよく分からないまま「売り出し価格」を決めています。 買い手も、「市場価格」に対して「売り出し価格」がどのように設定されているのかはよく分からないまま購入せざるを得ません。

 シンガポールと日本では、どちらのインターネット不動産サービスが利用しやすいでしょうか。やはり日本も成約価格の公開に踏み切り、一般の売り手・買い手も「成約価格」をベースとした、正確な「市場価格」を簡単に見られるような市場を作れば、一般人でも安心して売買できる市場になっていくのではないでしょうか。

(編集協力=ジャーナリスト・千葉利宏)

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<不動産売却の基礎編>
相場を知るために、まずは「一括査定」を活用!

 不動産の売却に先駆けて、まずは相場を知っておきたいという人は多いが、それには多数の不動産会社に査定をしてもらうのがいい。

 そのために便利なのが「不動産一括査定サイト」だ。一括査定サイトで売却する予定の不動産情報と個人情報を入力すれば、最大6社程度から査定してもらうことができる。不動産の相場観が分かるだけでなく、きちんと売却してくれるパートナーである不動産会社を見つけられる可能性が高まるだろう。

 ただし、査定価格が高いからという理由だけでその不動産会社を信用しないほうがいい。契約を取りたいがために、無理な高値を提示する不動産会社が増加している。

 「大手に頼んでおけば安心」という人も多いが、不動産業界は大手企業であっても、売り手を無視した手数料稼ぎ(これを囲い込みという)に走りがちな企業がある。

 なので、一括査定で複数の不動産会社と接触したら、査定価格ばかりを見るのではなく、「売り手の話を聞いてくれて誠実な対応をしているか」、「価格の根拠をきちんと話せるか」、「売却に向けたシナリオを話せるか」といったポイントをチェックするのがいいだろう。

 以下が主な「不動産一括査定サイト」なので上手に活用しよう。

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■相場を知るのに、おすすめの「不動産一括査定サイト」はこちら!
◆HOME4U(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所
掲載する不動産会社数 900社 不動産一括査定サイト「HOME4U」の公式サイトはこちら
サービス開始 2001年
運営会社 NTTデータ・スマートソーシング(東証一部子会社)
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、日本初の一括査定サービスであり、運営会社はNTTデータグループで安心感がある点。弱点は、提携会社数がやや少なめであること。
HOME4U公式サイトはこちら
◆イエウール(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
掲載する不動産会社数 1400社以上 不動産一括査定サイト「イエウール」の公式サイトはこちら
サービス開始 2014年
運営会社 Speee
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、掲載する会社数が多く、掲載企業の一覧も掲載しており、各社のアピールポイントなども見られる点弱点は、サービスを開始してまだ日が浅い点。
不動産一括査定サイト「イエウール」の公式サイトはこちら
◆LIFULL HOME'S(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件
掲載する不動産会社数 1692社(2018年8月)
サービス開始 2008年
運営会社 LIFULL(東証一部)
紹介会社数 最大6社
【ポイント】強みは、匿名査定も可能で安心であるほか、日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営している点弱点は大手の不動産仲介会社が多くはないこと。
不動産一括査定サイト「LIFULL HOME'S」の公式サイトはこちら
◆スマイスター(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫
掲載する不動産会社数 1400社 不動産一括査定サイト「スマイスター」の公式サイトはこちら
サービス開始 2006年
運営会社 リビン・テクノロジーズ
紹介会社数 最大6社
【ポイント】強みは、掲載している不動産仲介会社数が多く、マンション、戸建て、土地以外の工場、倉庫、農地も取り扱いがある点。弱点は、運営会社が広告代理店で上場していないこと。
スマイスター公式サイトはこちら
◆イエイ(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
掲載する不動産会社数 1000社 不動産一括査定サイト「イエイ」の公式サイトはこちら
サービス開始 2007年
運営会社 セカイエ
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、サービス開始から10年以上という実績があるほか、対象となる不動産の種類も多い。「お断り代行」という他社にないサービスもある。弱点は、経営母体の規模が小さいこと。
不動産一括査定サイト「イエイ」の公式サイトはこちら
◆マンションナビ(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション
掲載する不動産会社数 900社超、2500店舗 不動産一括査定サイト「マンションナビ」の公式サイトはこちら
サービス開始 2011年
運営会社 マンションリサーチ
紹介会社数 最大9社(売却6社、賃貸3社)
【ポイント】 強みは、マンションに特化しており、マンション売却査定は6社まで、賃貸に出す場合の査定3社まで対応している点。弱点は、比較的サービス開始から日が浅く、取扱い物件がマンションしかない点。
マンションナビ公式サイトはこちら
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