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連載経済小説 東京崩壊
【第3回】 2012年3月16日
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高嶋哲夫 [作家]

アメリカの友人

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第一章

 森嶋は定時に役所を出て、渋谷に向かった。

 駅近くの喫茶店に入って部屋の中を見渡すと、奥の席で女性が本を読んでいる。

 森嶋がその横に立つと、女性が顔を上げてほほ笑んだ。細川優美子、森嶋と同期の財務省のキャリア官僚だ。

 大学は同じだが、大学時代の接点はなかった。森嶋は経済学部。優美子は法学部出身だ。昔、優美子に「官僚になるのに、なぜ法学部ではなく経済学部に進んだの」と聞かれたことがある。「金持ちになりたかったんだ」と答えると、優美子は笑い出して、しばらく止まらなかった。

 森嶋より1年前にハーバード大学に留学して帰国している。

 「財務省でも定時に帰れることがあるんだ」

 「1週間も前からそのために準備してたのよ。あなたも定時に役所を出られるのは今のうちだけよ」

 「日本の役所と企業の悪い癖だ。役所にいればいいってもんでもないだろう。仕事は、もっと合理的にやるべきだ」

 「2年ぶりね。すれ違いだったから。配属は決まったの」

 「まだだ。一応、前の総合政策局政策課に入っているが、近いうちに異動になる。希望は出しているんだけどね」

 「国土計画局に行きなさいよ。総合計画課なんて面白そうよ。仕事は楽そうだし」

 「でも、この時期の留学は運が悪かった。2年留守にすると日本自体も日本を取り巻く状況もかなり変わった」

 「どうしたのよ。いつも楽観的で前向きなシン君が」

 「今日、ポカをしてね。課長補佐からヘンな目で見られた」

 森嶋は昨夜からのことを話した。

 優美子は真剣な表情で聞いている。

 「地震の確率は、正式な発表じゃないんでしょ。だったら、上に上げたのはまずかった。ここはアメリカとは違うのよ」

 たしかにここはアメリカとは違う。突飛で軽率な奴と思われても仕方がない。

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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