2000年に開始された量的緩和政策は、06年に停止された。日銀が保有する長期国債の残高も、04年をピークとして減少した。

 しかし、10年10月に、再び国債購入が開始された。

経済危機による
税収激減に対処

 2010年10月5日、日本銀行は「包括的な金融緩和政策」を決定した。

 この政策の眼目は、国債、CP(コマーシャル・ペーパー)、社債、ETF(上場投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)などの金融資産の買入れを行なうため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設したことである。

 基金買入れで保有する長期国債は、銀行券発行残高を上限に買入れる長期国債と区分のうえ、異なる取り扱いとするとした。

 それまであった日銀券ルールでは、購入限度額を恣意的に変えることはできない。しかし、基金の限度は恣意的に変えられる。このため、国債購入の自由度が拡大したわけだ。

 なぜ、このタイミングで新しい金融政策が取られたのだろうか?

 一般には、景気が回復しないからとか、デフレから脱却しないからなどと言われた。しかし、10年前半は、中国への輸出の回復で、09年の落ち込みからの回復が顕著になりつつある時期だった。マクロ経済はむしろ上向きに転じつつあったのである。

 政策が取られた理由は、マクロ経済ではなく、国債発行の急増だ。

 08年9月にリーマン危機が発生し、税収が激減した。これによって、国債の発行額が急増したのである。

 それまでは、毎年度30兆円台を超えることがなく、06、07年度には20兆円台にまで減少していた新規国債発行額が、09年度にはいきなり52兆円になった。