現時点で話題沸騰とまでは行かないが、これから多くの人々の関心を集めそうなエピソードがある。国内外の情報を紹介するサイト「Pouch」(ポーチ)が紹介した「ナースが聞いた『死ぬ前に語られる後悔』トップ5」がそれだ。Twitterなどを通じて「いい話」として流通している。

 内容をかいつまんで紹介しよう。死期を目前にした患者と話す機会の多いオーストラリアの女性看護士が、「患者の語る後悔には次の5つが多い」と気づいた。

「自分自身に忠実に生きれば良かった」「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」「もっと自分の気持ちを表す勇気を持てばよかった」「友人関係を続けていればよかった」「自分をもっと幸せにしてあげればよかった」である。最後は「これを読んで、あなたは明日からどう過ごしますか」と締められる。

 調査が行なわれたというより、あくまで看護士の印象なのだろうが、「まあ、事実に近いはず」と思わせられる内容である。「実は殺人を犯した」などの重大な秘密を持っていたり、奔放に生きすぎて悔いているのでない限り、ビジネスパーソンの後悔とはこんなものであろう。

 日本と比較すると、欧米諸国(この場合オーストラリアを含む)では、仕事より家庭を大切にする、休暇を謳歌する、きちんと自己主張する、パートナーへの愛情を明確に言葉で伝える、といったイメージがある。

 だが、後悔トップ5を見る限りでは、他人の目を気にして、自分自身に忠実に生きられなかったり、仕事を優先するあまり友人とのつきあいが疎遠になったり、最後には「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」と嘆くケースも珍しくないことがわかる。

 日本のビジネスパーソンが将来を考える上でも参考になる「いい話」ではある。実際、多くの個人ブログがPouchの記事を紹介し始めている。普遍的なエピソードのせいか、「オーストラリアの」看護士という説明が抜け落ちているケースもあり、フォークロアの誕生過程を見るかのようである。

 当然書籍化されるのだろうと思ったら、昨夏の時点で件(くだん)の看護士の名で出版済みである。今回の日本上陸は翻訳版登場への布石かもしれない。死期を前にしたビジネスマン(俳優は役所広司か渡辺謙あたり?)が、友人や元妻を訪ね全国を旅するロード・ムービーにもできそうだ。

(工藤 渉/5時から作家塾(R)