3月1日、日本初の本格LCC(格安航空会社)、ピーチ・アビエーションが就航を開始し、いよいよ日本の航空業界が新たなフェーズに突入した。料金は、大阪~札幌間が4780円~1万4780円、大阪~福岡間が3780円~1万1780円という、常識破りの格安ぶりである。そこで気になるのは、LCCの登場で日本の交通機関が値下げ競争に巻き込まれ、疲弊してしまうのではないかという見方が増えていることだ。とりわけ、新幹線や高速バスなど、これまで飛行機の代替として使われてきた交通機関へのインパクトは大きそうだ。一方で、LCCは旅行需要を呼び起こし、経済を活性化させる可能性もある。長引く不況の折、空路の価格破壊は消費者の“足”をどのように変え、日本の交通網にどんな影響を与えるだろうか。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

大阪~札幌間が最安値で4780円!?
日本初の本格LCCが始めた「空の価格破壊」

 ANA(全日本空輸)の系列に属する日本初の本格LCC(格安航空会社)、ピーチ・アビエーションが3月1日から運行をスタートした。初号機の名前は「Peach Dream」。関西国際空港を拠点とし、その記念すべき第一便は新千歳空港(札幌)行きのMM101便であった。

 最大の魅力は、大阪~札幌間が4780円~1万4780円、大阪~福岡間が3780円~1万1780円という格安の料金。空席状況や予約時期など、需給の状況によって株価のように値が変動するのは、ピーチの大きな特徴だ。

 飛行機に3000円台で乗れる時代の到来は、従来の高額な料金設定に慣れている我々からすると、にわかに信じがたいほどの衝撃である。ただし、そのぶん従来と違う「ルール」も存在する。

 たとえば、受託手荷物の預りが有料となっているほか、座席指定や機内サービスを利用する場合も別途料金がかかる。同社のHPによると、気軽に利用できる「『空飛ぶ電車』のようなエアライン」を目指しており、ブランケットの貸し出しや機内エンターテインメントの設置も行なっていない。料金をより安く設定するために、徹底した合理化が図られているのだ。

 しかしながら、フライト時間が短い国内線では、「機内サービスやエンターテインメントの充実よりも、料金が安い方が断然嬉しい」(20代男性)との声も多い。就航初日はチェックイン端末の不具合で発着が遅れるトラブルがあったものの、物珍しさも手伝って、乗客の評判はおおむねよかったようだ。