橘玲の日々刻々 2018年4月7日

中国では、外界と隔離された超監視社会という
「異形の未来社会」が気づかぬうちに進行している
[橘玲の日々刻々]

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 2015年3月に刊行した『橘玲の中国私論』が『言ってはいけない中国の真実』と改題して文庫化され、それに合わせて電子版も改定した。文庫化にあたって本文はほとんど修正する必要はなかったが、その代わり発売以降の変化を踏まえた「「超未来社会」へと向かう中国」という章を書き下ろした。

 文庫版の発売とほぼ同時期に、中国経由でネパールを旅行した。そこでここでは、そのときの中国の印象をすこし書いてみたい。

 最初にちょっとしたエピードを。

 日本とネパールのあいだには直行便がないので、成都で乗り継いで昆明に行き、そこで1泊してカトマンドゥに向かうことにした。成都での乗り継ぎは6時間ほどあり、街まで行って用事を済ませることもできた。

 昆明を訪れたのは10年ほど前なので、街の変貌を見るために都心のホテルに泊まることも考えたのだが、近年は渋滞がひどくなっているとのことなので空港近くのトランジットホテルを利用することにした。

 調べてみるとホテルはたくさんあるものの、どこも2つ星か3つ星で、そのなかでいちばんよさそうなところを選んだ。空港との無料送迎、24時間のコンビニ、超絶辛い麺の朝食がついたなかなか快適なホテルだったのだが、朝起きると、両腕の肘から上の部分と両腿の内側に大量の虫刺されの跡ができていた。ノミかダニ、南京虫のせいだろうが、不思議なことにまったく痒くないのだ。

 ここからは私の想像だが、虫の生存戦略からすれば、刺しても自覚症状がない方がずっと有利だ。朝まで気づかれることなく、好きなだけ血を吸うことができるのだから。このようにして中国の虫は、抗体反応を起こさないよう進化したのではないだろうか。

アジア有数の大都市となった深センの高層ビル街。20年前はどこにでもある農村だった (Photo:ⒸAlt Invest Com) 

 

わずか5年で地下鉄が8路線以上増えた成都

 日本のメディアでは「中国経済の減速」の報道が喧しいが、実際にはどうなのだろう。

 成都を最後に訪れたのは2012年12月なので5年ほど前になる。そのときは地下鉄1号線が開通し、2号線の一部が動いていた。今回驚いたのは、その地下鉄が10号線までできていたことだ。

 その代わり道路は渋滞し、流しのタクシーはまったくつかまらなくなった。外資系ホテルがあったのでそこのドアマンに訊いてみると、タクシーは配車アプリで呼ばなくてはならないのだという。それもかなり時間がかかるといわれ、昆明便の搭乗に間に合わないのではないかと慌てたが、「地下鉄で行けばいいんだよ」と教えてもらった。中心部からは2度乗り換えが必要だが30分ほどで、大きな荷物がなければ車よりずっと便利だ。

 日本の都市では大阪の地下鉄が9路線で、成都はそれに匹敵する。1.5路線から10路線になるのにわずか5年だから、発展のスピードはやはりすさまじい。

 そのわりに変化が見えにくいのは、日本のように地上駅を中心にそれぞれの街がつくられていくようになっていないからだろう。

 これは、新興国で電話の有線網より先に無線ネットワークが広がるのに似ている。住宅密集地に新たに鉄道を敷くのは困難だが、地下なら自由に開発できる。こうして中国では、街の景観はそれほど変わらないままに、いつの間にか地下に巨大な交通ネットワークができているのだ。

 もうひとつ驚いたのは、無料のVPN(仮想私設網)がまったくつながらなくなっていたことだ。中国では情報統制のためGoogle、Twitter、Facebook、Lineなどが利用できないことはよく知られているが、この障壁(グレートファイアウォール)は海外のサーバーを経由することで回避できる。これがVPNで、昨年9月に深センと南寧を訪れたときはなんの問題もなくアクセスできたが、今回は全滅だった。

 無料のVPNでは、ホームページに掲示されている海外サーバーのIPアドレスを指定して接続する。中国からはVPNサイトのホームページは見られないので一覧をプリントアウトしていくのだが、これが見逃されていたのは外国人しか使わないからだろう。だがいまは、公開されている海外サーバーのIPアドレスをすべてつぶしているようだ。

 有料のVPNサービス(こちらはIPアドレスが公開されていない)はまだ使えるようだが、中国に駐在する外国人ビジネスマンの利用が中心で、1カ月単位の長期契約がほとんどだ。今回のようなトランジットではあきらめるしかないのだろう。

 VPNが使えなくてもネットにはつながるので、Gmailがダメでもメールサーバーに直接アクセスすればメールの送受信は可能だ。困ったのは検索で、GoogleがブロックされているのでこれまではYahoo!の検索を使っていたのだが、今回はこれもブロックされていた。このままでは検索や地図は百度(バイドゥ)、決済はアリババの「アリペイ」、SNSはテンセントの「ウィーチャット」になってしまう。郷に入れば郷に従えで、中国に来たらみんな「中国人」にならなければならないのだ。

成都のオフィス街。この下に巨大な地下鉄網がつくられている  (Photo:ⒸAlt Invest Com) 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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