日本のリーダーと海外のリーダーでは「成熟度」に差がある

「人間関係は悪いのが普通」と考えれば仕事は楽になる森 時彦(もり・ときひこ)
神戸製鋼所を経てGEに入社し、日本GE役員などの要職を務める。その後、テラダイン日本法人代表取締役、リバーサイド・パートナーズ代表パートナーなどを歴任。現在はチェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役として組織活性化やリーダー育成を支援するかたわら、執筆や講演等を通じてファシリテーションの普及に努めている。ビジネス・ブレークスルー大学客員教授、日本工業大学大学院客員教授、NPO法人日本ファシリテーション協会フェロー。近著に『ストーリーでわかるファシリテーター入門』がある。

 非常に共感します。かつてGEのジャック・ウェルチも、リーダーとして必要な要素として「4つのE」というものを掲げていました。

Energize:周りを元気づける力
Energy:仕事に対する熱意
Edge:機転が利く・頭が切れる
Execute:実行する力(結果を出す)

 実はこれ、最初は「3つのE」だったらしいんですね。「Energize」「Energy」「Edge」の3つです。しかし、この「3つのE」がそろっているのに、リーダーとして機能しない人材がいたようなんです。それはなぜかと突き詰めたら、つまりは「実行力がないからだ」と(笑)。それで最後に「Execute」をつけたんですね。Executeは日本語では「実行」と訳されることが多いのですが、ニュアンスとしては「結果を出す」に近いものです。荒川さんのお話を伺って、「身につける」とはまさに「3つのEに、Executeをプラスする」ということだと感じました。

荒川 なるほど。「実行」しなければ、何も生まれないですからね。

 ところで、アメリカのビジネススクールに行き、アメリカの会社に勤めた経験から感じたのは、「海外のリーダーは若くして成熟している」という点です。同じ年齢でも、日本人に比べて海外のリーダーは成熟度がとても高い。30代の前半で、かなり大きな組織のトップになって、ちゃんとリーダーシップを発揮している。あれは、日本ではなかなかお目にかかれないですね。

荒川 たしかに。おっしゃる通りだと思います。

 日本と海外の成熟度の違いは何か? ひとつ仮説として挙げられるのが、やはり「頭につく」「身につく」という、さきほどのお話だと思うんです。

 海外のリーダーたちは「頭につく」と「身につく」の行き来が多い。勉強したらすぐに実践し、実践してうまくいかなかったらすぐ勉強し直す。一方、日本のリーダーは、最初からすべてを頭の中に入れようとして、それが済んでから実践しようとする。だから実践するまでに時間がかかりますし、実践で行き詰まっても、なかなか勉強に帰ってきません。

「頭につく」と「身につく」、「勉強」と「実践」を行き来しながら、「ああ、本に書いてあったあれは、こういう話か」「いま自分は、本のなかのこの段階にいるな」「本によると、次はこうならないといけない。そのために何をしようか」と考えながら行動を重ねているかどうか。これが最終的には、成熟度の違いとなって表れていると感じます。

荒川 「人間関係は悪いのが当たり前」「職場にトラブルが起きるのは当たり前」なのと同じく、「実践したら失敗するのが当たり前」なんですよね。失敗しないために勉強するのではなく、失敗を活かすために勉強すると考えれば、その後の行動も変わってくるかもしれませんね。「勉強」と「実践」のサイクルを回し続けられるかどうかが「成熟度」に関わってくるんでしょうね。はやく「成熟」したければ、失敗をおそれずチャレンジすべきなんですね。

(続く)

「人間関係は悪いのが普通」と考えれば仕事は楽になる