このままでは日本の大企業が
再びグローバルの雄になることはない

「日本の企業がデジタルイノベーションを起こすためには何が必要か」ということを大きなテーマに、約1年にわたって続けてきた本連載も、今回で最終回を迎えます。

 各エキスパートの原稿や対談なども交えつつ、BCGデジタルベンチャーズ(BCGDV)の新規ビジネス創出のための手法を紹介し、米国や中国との差が拡大する一方でなかなか変革に踏み切れない日本の大企業が抱える課題について考察してきました。読者の皆さまにとって、何か参考になったことがあれば、また多少なりとも現状に警鐘を鳴らすことができたなら、と願っています。

 この連載を進めていく一方で、私たちBCGDVでは数社のコーポレートパートナーである大手企業との協業、もしくは協業検討を行ってきました。そして今、私は改めて日本の企業、特に大企業がひとつの重大な局面を迎えていると、強く感じています。

 良いアイデアがあっても埋もれてしまう。プロジェクトを推進していても、人事異動、四半期や年次決算・予算の過程で止められる。自分の時間を割き(それも30分や1時間でなく、必要あれば丸一昼夜かけるといった具合に)、結果にもコミットする決裁者や、プロジェクト・オーナーの不在。こうした状況にある限り、いつまで経っても日本の大企業が再びグローバルの雄となれることはないだろうと考えています。

 大企業だから改革が難しいのか? 私の答えはNOです。確かに小回りの利くベンチャー、中小企業と比べると、舵取りは難しいでしょう。しかし、グローバルに視野を広げると、それを実現している企業、またはやりきろうとしている伝統的大企業は多数存在しています。いや、むしろすでにほとんどの企業が取り組んでいると言っても過言ではないかもしれません。

 BCGDVが関わった、欧州エネルギー大手企業もそのような企業の1つです。私たちとの協業の結果、複数のジョイントベンチャーが立ち上がり、現在もさらに複数の新規サービスを展開すべくプロジェクトが進行中です。ベンチャーの強みが小回り・スピードと、全体的に資金調達額が増加の傾向にある中で1つのサービスに集中的に資金を投入することであれば、大企業の強みは、アセットを最大限活かし、複数の大型案件をポートフォリオ(投資資産を組み合わせたり、投資先を分散させたりすること。第11回参照)で同時に立ち上げられることです。この取り組みは、アセットの限られるベンチャーには真似できない、大企業の強みを生かした仕掛けだと言えます。

デジタル化を推進できる経営者とできない経営者は何が違うかBCGDVについての説明を行う筆者