2016年4月1日以降、電気の小売業への参入が全面自由化され、全ての消費者が電力会社やメニューを自由に選択できるようになった。ライフスタイルや価値観に合わせて電気の売り手やサービスを選べるようになったのだが、まだ浸透しているとは言い難い。

 かつて電力は各地域の電力会社だけが販売しており、消費者は電気をどの会社から買うかを選択することはできなかった。

 最初の小売り自由化が始まったのは2000年3月。「特別高圧」区分の大規模工場やオフィスビルが対象で、新規参入の「新電力」から電力を購入することが可能になった。その後、04年と05年の4月から対象が「高圧」区分の中小規模工場や中小ビルへと徐々に拡大。16年4月には「低圧」区分の家庭や商店などでも電力会社を自由に選べるようになり、ついに電力小売りの全面自由化が実現した。

 よく勘違いされるが、電力小売り全面事由化後も電力供給の仕組みは変わらない。電力供給は発電部門、送配電部門、小売り部門の三つの部門に分かれるが、「新電力」などの参入が自由になったのは発電と小売りの部門で、送配電部門は品質や安定供給を担保するため、引き続き政府が許可した各地域の電力会社が担当している。つまりどの小売業者から電気を買っても、これまでと同じ送配電ネットワークを使って電気は届けられるのだ。

 では、電力全面自由化によって何が変わったのか。最も大きな変化は、さまざまな事業者が小売市場に参入してきたことで、消費者にとって多彩な選択肢が生まれたことだ。競争が活発化することで、かつてなかった料金メニューやサービスが登場している。

 例えば、時間帯別の電気料金など、多様な料金メニューの中から、消費者のライフスタイル(=電気使用の特徴)に合わせたプランを選ぶことができる。また電気とガス、電気と携帯電話などのセット割引や、各種のポイントサービスなども登場している。