住宅ローン相談室
【第15回】 2018年4月17日公開(2018年4月18日更新)
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淡河範明

「土地代金」「注文住宅の工事代金」はどう借りる?
住宅ローンの「分割融資」「つなぎ融資」を完全解説

新規に土地を購入して注文住宅を建てる場合、土地代金や工事の着手金などは住宅ローンの「分割融資(土地先行融資)」、「つなぎ融資」で借りることができます。ただし、仕組みが複雑なため、不動産会社や銀行の言うなりに借りて、メリットを十分に享受できていないケースも散見します。そこで借り方のポイントを、住宅ローンアドバイザーの淡河範明さんにアドバイスしてもらいました。

完成後の借入が原則の住宅ローンを
「つなぎ融資」「分割融資」がヘルプ

相談内容:
読者 土地探しから始めて、地元の工務店に注文住宅を依頼するつもりでいます。こうした場合、土地の購入代金や工事の着手金などは、どのように借りればいいのでしょうか? 土地は土地、建物は建物で2本の住宅ローンを申し込むことになるのでしょうか? ネットなどでいろいろ調べてみましたが、いま一つはっきりしなくて困っています。

 室長の淡河  注文住宅では、所有している土地がなければ、新規に土地を購入して、その後で建物を新築することになります。その際、土地の購入代金が現金で払えないのであれば、どこかから借りなければなりません。

 建物の工事代金についても、ハウスメーカーや工務店から、着工金、中間金、残金の3分割で支払いを求められるのが一般的です。材料費や人件費などの回転資金が必要になるからです。

 建売住宅やマンションを手に入れる場合、不動産を一体で購入することになるため、融資の実行も引き渡し時の一度で済みます。ところが、注文住宅では、土地と建物の取得時期が一致しません。支払先も不動産会社と工務店といったように2カ所に分かれます。

 このように注文住宅の取得では、住宅ローンで最後に一括払いするわけにはなかなかいきません。途中の段階で、先払いが必要になるのが一般的です。その際、自己資金でまかなえない場合は、住宅ローンの「分割融資(土地先行融資)」や「つなぎ融資」を利用することになります。ただし、銀行はこれらの融資に対して慎重です。「つなぎ融資については他で借りてください」というように、対応していない銀行もめずらしくありません。

 そもそも住宅ローンの低金利は、本人またはその家族が居住し、土地と住宅を担保に入れることを前提に実現しています。そのため融資の実行は、建物が完成して抵当権を設定できるようになってからが原則です。

 ところが注文住宅のように、建物の完成前に土地の購入代金や工事代金の一部を融資するケースでは、建物の登記すら終わっていないため、抵当権を設定できません。つまり担保なしで融資することになります。ですから、できれば貸したくないのです。

 まずはこのことを頭の片隅に留めてください。次項から分割融資とつなぎ融資の仕組みや違いについてお話ししていきますが、この根本を理解しておくと、わかりやすいと思います。

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「分割融資」=「住宅ローンの前払い」
低金利だが、登記関連費用の負担増

 「分割融資」は住宅ローンの前払いです。分割融資と呼ぶよりも「分割実行」のほうがイメージしやすいかもしれません。通常、住宅ローンの融資実行は建物の完成後に一度だけですが、それを何回かに分けて先に実行してもらうのです。

 そのため、例えば土地の購入代金を分割融資してもらうのであれば、その段階で建物完成までの全費用を見積もり、全体の融資額を決める必要があります。気に入った土地が見つかったら、工務店等にすぐに設計を依頼し、後でプラン変更することになっても対応できるように、多めの金額で申請しておくのがポイントです(このように土地の取得費用に限定して分割融資してくれる商品を「土地先行融資」と称している銀行もあります)。後から変更できないわけではありませんが、再審査が必要になるため、かなりの手間になります。

 すでに土地は所有していて、建物だけを注文する場合も同様です。建築会社への支払いは着工時(着工金)、上棟時(中間金)、完成時(残金)などに分けて支払うのが通例ですから、自己資金が足りない場合には、住宅ローンの実行を建築会社の支払い条件に応じた形で申請します。

 ただし、多くの銀行が分割回数を2回までと制限しています。そのため、分割分は、土地の購入代金にしか利用できないのが現実です。残りは自己資金で(もしくは他の銀行・金融機関からつなぎ融資を別に借りて)まかなうことになります。

 実行金利は、分割実行時の住宅ローン金利がその都度適用されるのが原則です。ただし一部の銀行は、「分割実行のたびに変動金利か固定金利を選択」「1回目の実行で選択した金利タイプを継続」「分割融資で選べるのは変動金利だけ(固定金利は利用できない)」なども選択できます。

 一方、返済期間については、1回目の分割実行日から最長35年です。通常の住宅ローンを分割しているだけだということが、このことからもおわかりになるかと思います。

 なお、分割融資を受けるにあたって、土地に抵当権が設定されます。その際、抵当権設定登記の登録免許税は、住宅購入時に受けられる優遇税率が適用されず、通常より0.3%高い0.4%の設定税率がかかります。このほか、司法書士への報酬費用や、金銭消費貸借契約を結ぶごとに、融資手数料や金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代などの費用もかかるため、分割回数が多いほど、諸費用もかさみます。

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⇒  住宅ローン借り換えの諸費用は30万~280万円と金利が同じでも、住宅ローンにより大きく差がつく!住宅ローンのお得度は「金利+諸費用」で比較しよう

住宅ローンと別枠の「つなぎ融資」
担保不要だが、金利は高め!

 一方、「つなぎ融資」は土地の購入代金や建物工事の着手金、中間金の支払い用に、住宅ローンとは切り離して、別枠で金銭消費貸借契約を結ぶ短期融資です。通常、住宅ローンを組む予定の銀行に依頼しますが、ノンバンクなども借入先の候補となります。

 つなぎ融資は無担保融資が原則となるため、金利は高めに設定されます。住宅ローンの金利が1%前後だとすると、つなぎ融資の金利は3%前後が相場です。また、住宅ローンとは別契約のため、融資手数料等も別途かかります。

 返済については、建物が完成して、住宅ローンの融資が実行される際に一括返済します。そして、住宅ローンで借り直すことができます。ただし、つなぎ融資を使わず現金で支払った分については、住宅ローンの融資額に含めるのは一般的に難しいので、事前に確認が必要です。

 以上、分割融資とつなぎ融資の違いをまとめると、以下のようになります。

 「分割融資」と「つなぎ融資」の違い
分割融資
(土地先行融資)
比較項目 つなぎ融資
住宅ローンの一部 住宅ローンとの関係性 住宅ローンと別枠
最大4〜5回 自由度 回数に制限はなく、必要に応じて審査
融資実行のたびに融資手数料、収入印紙等が発生 手数料 包括契約を選べれば、融資手数料、収入印紙は1回のみ
土地が抵当に(抵当権設定費用等がかかる) 担保 原則、無担保だが、例外あり
住宅ローンの金利を適用 金利 住宅ローンの金利より高め
住宅ローンなので、住宅ローンなので契約時点から最長35年 返済期間 完成時までで1〜2年以内
あり 団信 原則なし

分割融資とつなぎ融資のおトク度は
簡単には比較できない

 では、分割融資とつなぎ融資のどちらを選べばトクでしょうか? ズバリお答えしたいところなのですが、正直、お答えできないのです。コスト面でのデメリットを上げると、「分割融資」は抵当権設定費用がかかる一方で、「つなぎ融資は」は金利が高めであり、どちらかが圧倒的にコストが安い訳ではありません。

 また、銀行によって融資条件が微妙に異なりますし、借りる金額やタイミングが違えば、それだけで結果も変わってきます。さらに登記関連の費用も関係してくるため、どちらのコストが安いかはケース・バイ・ケースといえます。一般の方が計算するには複雑すぎるので、できれば、専門家に相談してみるのがいいでしょう。

 ただ、実際にシミュレーションしてみると、どちらを選んでも大差ないことがほとんどです。そのため、損得以外の要素を重視して決めるのがよいでしょう。

 前記したように、分割融資、つなぎ融資とも扱ってない銀行はめずらしくありません。また、取り扱っていても、どちらか一方だけのところがほとんどです。加えて分割の回数制限等、各銀行で独自のルールを設けているため、自分のニーズを満たすところを見つけるだけでも大変だと思います。

 話がそれますが、銀行が分割融資やつなぎ融資に慎重なのは、借り手本人の問題ではなく、工事の請負先の体力を危惧してのことです。建物が完成するまでの間、建物の所有権は工務店等に帰属します。そのため、もし工事の途中で倒産されてしまうと、借り手から建物部分について回収できるものが何もないからです。

 そのため、つなぎ融資等においては、「ハウスメーカーなら」とか、「自行と提携先の不動産会社の紹介なら」といったように、その銀行と工事業者との関係性が審査結果に大きく影響します。大手のハウスメーカーであれば通りやすいと思いますが、地元の小さな工務店だと対応しない銀行があるのが現実です。とはいえ、工事費が安いのは工務店ですので、頭の痛いところかと思います。

基本は「自己資金を先に使う」のがいいが、
金利上昇局面と考えるなら、後に支払うのもアリ

 このように分割融資とつなぎ融資のどちらがトクかは一概に言えないのですが、気をつけたいのは、「自己資金を使うタイミング」です。借り方のルールを最後にまとめておきます。

ルール1 「基本は、自己資金を先に使う」
 つなぎ融資は早く借りるほど、金利負担が増えます。最終的には住宅ローンで一括返済するわけですから、できるだけ自己資金を使って借入額を少なくしたり、借入時期を遅らせたほうが、支払利息が少なくて済みます。

 自己資金1000万円を土地購入資金に利用し、半年後に家が完成するのであれば、1000万円×3.475%×(6カ月÷12カ月)=17万3750円となり、約17万円の削減ができます。つまり「つなぎ融資」は、基本的には、自己資金を使って融資額を少なくするのがポイントです。
 土地を購入する場合も、決済日をできるだけ延ばすように交渉してみましょう。決済日を1カ月後ろにズラせば、つなぎ融資の利用も1カ月遅らせることができます。借入額が5000万円だとすれば、それだけで6万円程度のコストを削減できます。

ルール2 「金利上昇局面と考えるなら、自己資金は後の支払いに回す」
 現在、金利はじりじりと上昇中です。余程のことがない限り、この傾向はしばらく続くと思います。ということは、今、借りるほうが将来借りるより金利が低くなる可能性があるということです。つなぎ融資は、完成時にしか金利を確定できないのに対し、分割融資は、利用時に金利を確定することができます。
 土地を購入してから家が建つまでに1年程度かかります。1年間で金利は0.2~0.3%くらい変わる可能性がありますから、自己資金は最後に借りる場面で使い、金利上昇後の借入額を最小限に抑えるのです。土地代が高ければ、それだけ大きな借入金額を、金利が低いうちに固定化できることになります。

 いずれにせよ、「分割融資」「つなぎ融資」はかなり複雑です。利用する際は、住宅ローンの専門家に相談することも検討してはいかがでしょうか。

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ホームローンドクター代表・淡河範明

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代表・淡河範明

日本興業銀行(現みずほ銀行)、米国系証券会社を経て2006年にホームローンドクター設立。延べ5000件の住宅ローンのコンサルティング実績がある。
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