「引きこもりがだんだん解消されていくことは、分厚い中間層の復活につながる。これから厚労省の取り組み強化の動きを、私も後押しをしていきたい」

 3月16日、高年齢化、長期化する引きこもり問題が参議院予算委員会でも取り上げられ、野田佳彦総理大臣は、こう答弁した。

 可もなく不可もなく生きてゆく、この野田首相の持論の「分厚い中間層」を構築することがいいかどうかの議論は別にして、「引きこもり」という文言を使い、総理大臣が国会で対策に言及するのは、おそらく初めてのことだろう。

 前回の当連載で、英国の国営放送局「BBC」のディレクターが来日し、日本の引きこもり問題について取材されたこと、英国オックスフォード大学の英語辞書の単語の中にも「hikikomori」が収録された話を紹介したばかり。ようやく日本でも「引きこもり」という現象が社会的に認知され、長年“放置”され続けてきた問題の解決へ向けて、国のトップも本腰を入れると約束した格好だ。

「引きこもり」を“怠け者”から社会問題に
山本博司議員の奔走

 今回、引きこもり問題を同委員会で取り上げたのは、山本博司参議院議員(公明党)。

「元々、政治家になったきっかけも、私の娘が重度の知的障害者だったんです。娘の介護や子育てを通じ、行政制度の狭間での苦労を身をもって体験してきて、そういう方々の声を反映できるようにしたいという思いが原点にありました」

 山本議員は、29年間勤めた日本IBMを2006年8月に退職。郷里の四国に戻った後、「全国引きこもりKHJ親の会(家族会連合会)」の支部である香川県や愛媛県の家族会の人たちを地元の議員に紹介され、話を聞くうちに、引きこもり本人や家族の苦悩の世界を実感したという。

「当時はガイドラインが全国に徹底されていない状況の中で、引きこもりという存在が怠け者のように見られていた時代ですから、親御さんたちは、どこにも相談に行けない。昼夜逆転とか、家庭内暴力とか、様々な問題をそれぞれが味わって、親も高齢化する中で、どうしていいのかわからなくなっていることを認識したんです」