◆美味しい牛肉の方程式
◇味を決める「方程式」はこれだ

 「(牛の品種×えさ×育て方)×熟成=牛の肉の味」。これが著者の考える、美味しい牛肉の方程式だ。

 まず牛の品種は重要である。筋繊維の太さやサシの入り方などは、品種や血統により大きく左右されてしまう。

 次いで味わいに関わる大きな要因がえさだ。えさの種類は、牧草主体の粗飼料で育てるグラスフェッド、コーンなど穀物主体の濃厚飼料で育てるグレインフェッドに分かれる。牛の食べたものが味につながる。牧草地が少ない日本では後者が主だ。

 育て方は放牧と牛舎飼い、または両者の組み合わせである。日本ではほぼ牛舎飼いだ。こうした育成環境に加え、ビタミンAを抑制するかどうか(ビタミンAが不足するとサシが入りやすい)といった判断も、味を決める一要素となる。さらに飼育期間も重要だ。基本的には飼育期間が長いほど、味わいや香りが増すからである。ただしその分コストがかさむため、生産者としては早く出荷したいという葛藤がある。日本の場合、和牛は25~28ヵ月飼って出荷することが多い。

 牛を屠畜したあとの「熟成」というプロセスも、味に大きく関わっている。屠畜した直後の牛は、意外なことに味気ないものだ。冷蔵保管すると死後硬直が解け、酵素によりタンパク質がアミノ酸に変わる。軟らかさや、うまみも増す。こうしたことが日本でも認知され、「熟成肉」がブームになっている。しかし技術力は店によってまちまちで、なかには「腐敗」に近い肉を出す店もある。要注意だ。

◇個体識別番号を検索しよう

 スーパーで並ぶ肉はあまり美味しくない。その理由は熟成にある。一般消費者に売れやすくするには、見た目の鮮やかさが重要だ。暗褐色の熟成肉は手に取られにくい。そのため熟成の十分ではない肉が並んでしまうのである。

 一方で、比較的美味しそうなものを選ぶ方法はある。小売店に並ぶ牛肉には10桁の個体識別番号が表示されている。スマホなどを使い、牛の個体識別情報検索サービスにアクセスして検索すると、「牛の戸籍謄本」が出てくる。これにより性別や、屠畜時の月齢、屠畜日などがわかる。牛はメスのほうが、肉質がきめ細かく味わい深い。また一般的に長生きの方がうまく、屠畜から日数が経っているほうが熟成は進んでいる。

 こうした情報を得ることで、美味しい肉かどうか判断できるようになる。ただし本当にいい肉を買うためには、いい精肉店を見つけなければならない。狙い目は卸売業者の直営店だ。とはいえ見極めるのは難しい。情報と人脈も必要である。