“下り坂時代”の若者が切り拓くライフスタイル最前線<br />宮台真司が話題のシェアハウス「よるヒルズ」に迫る高木新平(たかぎ・しんぺい)/トーキョーよるヒルズ 編集長。1987年生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂入社。11年に退社し、新たな生き方を開発中。六本木にて『トーキョーよるヒルズ』というさまざまな枠組みを超えたライフスタイルを実践するコミュニティ型シェアハウスを立ち上げる。このほかコミュニケーションプランナーなど幅広く活動を展開中。 Twitter:https://twitter.com/shimpe1

シンペー よるヒルズの住人は5名。全員20代ですが、共通点は早々と大企業を辞めてしまった、または固定化されたサラリーマンの生き方や働き方に疑問を持っていることですね。

 じつは僕自身も大手広告代理店を1年4ヵ月で退職しているんですよ。会社は好きだったし、上司も理解のある人でした。かなり面白い仕事も担当させてもらった。だけどそのうち、時代を後追いする企業のあり方に深い疑問を持ってしまったんです。大きなパラダイムシフトが起こっているというのに、既存のビジネスフレームを維持するため、前年比がどうだという指標をひたすら追いかけている。もっとも、これは大企業の宿命なのでしょうが……。

 仕事ってなんだろう?生きるってどういうことなんだろう?そして、生活を豊かにするコミュニケーションって何なんだろう?と……。1度ゼロベースで考えてみたかった。

 これだけインタラクティブな時代です。ワークスタイルが変わり、プロジェクトベースで仕事が動き始めている今、もっと個人と個人がつながるライフスタイル、働き方があっていいのではないか、と思うようになりました。

宮台 それで代理店を辞めたわけか。24歳にしてその考え方。君はなかなか凄いね。

シンペー 退社した際に書いたブログエントリは、さまざまなメディアで議論を呼び、100万PVを超えました。予想以上の大きな反響に僕自身も驚きましたね。

 で、話は少し前後しますが、会社を辞めようと決めた僕は、「これは自分だけの問題ではないんじゃないか」と思い、仲間を探しました。たまたま同じように退職して生き方を模索していた友人と意気投合。さらに3人の友人に声をかけ、シェアハウスをしようということになったんです。

 単に一緒に暮らすだけでなく、何かの「プロジェクト」を通じてつながる生活がしたかった。昼間会社の仕事をしたうえで、夜は夜で朝まで自分たちのプロジェクトに取り組む。

 一般的にはあまり目立たないけれど、そういう働き方をする人が同世代にはとても多いんです。だったら、その多様な価値観を認め、応援するような場所をつくりたい。そんな想いを込めて「昼夜逆転 トーキョーよるヒルズ」と名付けました。厳密に言うと、昼夜逆転ではないんですけどね(笑)。 ともかく、僕も含めて自分なりの価値を追い求める人たちが知識や情報を共有する場所であり、挑戦していく人のためのセーフティーネットになればいいなと。

宮台 具体的には、どんなことをしているの?

シンペー 単純に人が集まってミーティングや作業をしていることも多いですが、リビングを会場にしてイベントや勉強会のようなものも開催しています。テーマは、たとえば「20年後の日本を考える」とか「ノマドってなんぞや」とか「エンジニアが徹夜で開発するハッカソン」とか。ウェブサービスのプレゼン会もよくありますね。

 フェイスブックで告知すると、「なんだかわからないけど、面白そう!」と、いろんな業界から人々が集結し、オープニングパーティーには、150人が集まりました。そのほか、企業やサービスとタイアップして、企画をしたりPRしたりすることもあります。他にもいろんな場として機能していますが、住人5人それぞれが自律的に動きながらも、協力できるところで協力し合い、自由に企画や運営に携わっています。

 一緒に暮らす相手にしろ、仕事のパートナーにしろ、それが価値観の共有できる人間となら幸せですよね。その点、僕らは公私の枠を超え、すべてをフラットにして話し合うわけですから、かなり一体感がありますよ。会社の会議室や無機質なセミナー会場だったらこの温度感は味わえないでしょうね。なにしろ、こたつにもぐって同じ地べたを共有しているんですから(笑)。