ロゴス、エートス、パトスは、聞き手の脳、直感、そして心に訴えかける。脳は事実を見極め、直感は相手が信頼できるかどうかを探り、心は行動を促す。効果的な説得には、この3つが欠かせない。

ジョージは私に対抗するために、この3つを本能的に使っていた。

純粋な感情は説得につながる

息子のパトス(感情)は私にとってどうにも抗いがたいものだということがわかった。幼いころのジョージは、泣くのを我慢しているときにはよく下唇をグッと突きだしていたものだ。キケロはこの技術――下唇の話ではなく、自制しようと必死な様子のこと――が気に入っていた。語り手が自制しようとしている姿は、その場にいる聞き手の気分を盛り上げる。

キケロはまた、純粋な感情は、偽りの感情よりも説得につながりやすいと述べた。ジョージの涙は、もちろん純粋なものだった。しかも泣くのを我慢しているせいで、彼の目はより多くのことを語っていた。

私のパトスも同じくらい効果的だったと言えればいいのだが、私がズボンの裾をまくりあげても、ジョージは面白いとは思ってくれなかった。彼が同意したのは、私がまぬけに見えるという点だけだ。
通常、ロゴス、パトス、エートスは三つ巴になって、議論に勝つために機能する。論敵の論理と聴衆の感情を利用すれば、はるかに簡単に聴衆を説得できる。

「譲歩」を使えば、相手は自らあなたが望む行動をとる

ここでは、ロゴスのなかでも特に効果的な技術である「譲歩」を紹介したい。

営業職の人は、あなたに物を買わせるためによく「譲歩」を使う。以前、営業畑出身の上司と仕事をしたことがある。昔の癖というのはなかなか抜けないものだということが、その上司を見ているとよくわかった。私の言うことに決して反対はしないのだが、私の提案とは逆のことばかりさせようとするのだ。