伝え方で、自分の味方を増やしていく

 以前から進行している社内プロジェクトに、新しく参加することになった佐藤くん。しかし、引き継ぎ資料などはありません。初めてプロジェクト会議に参加するにあたり、事前にプロジェクト概要を誰かに共有してほしいのですが、みんな忙しそう…。そんなとき、先輩に共有の時間を作ってもらうためには、どう伝えればよいでしょう?

「すみません、プロジェクトの概要を教えていただけませんか?」

などと直球でお願いしても、「いま忙しいから後で!」と断られてしまいそうです。

 では、こんな伝え方ならば、どうでしょう?

◯「いま頼れるのは、鈴木さんだけなんです。プロジェクトの概要を教えていただけませんか?」

 伝え方の技術、「あなた限定」を使ったこの言い方ならば、鈴木さんにひと肌脱いでもらえそうです。人は、「あなただけ」「あなたしか」と言われると「自分は特別な存在なんだ」と優越感を覚えるもの。忙しいときのお願いにも、つい応えたくなるのです。

 プロジェクトだけではなく、他にもたくさんわからないことが出てくるでしょう。たとえば、新しい会社に移れば、会議室の取り方だって違います。誰かに聞かなければわかりません。

「会議室の取り方を教えていただけませんか?」

とストレートに聞けば、もちろん教えてはくれるでしょうが、「今忙しいし、そんな初歩的なことを一から教えるのは面倒だなあ…」と後回しにされてしまう可能性もあります。

 ならば、こう伝えてみましょう。

◯「今日の午後か明日の午前中に、会議室の取り方を教えていただけませんか?」

 これは伝え方の技術、「選択の自由」を使った伝え方。

 人は2つ以上の選択肢を並べられると、ついどちらかを選んでしまうもの。「両方ダメ」と断わりにくくなるのです。この場合も、きっと「今日の午後3時ぐらいならば…」などと、先輩のほうから時間を決めてくれるでしょう。

 仕事にも徐々に慣れ、上司や隣の席の同僚とはかなり打ち解けたけれど、まだまだ頼れる相手が少ない。業務ではまだ関わっていない同僚とも、仲良くなるチャンスがほしい。

「一緒に飲みに行く」のは手っ取り早く打ち解けられる方法のひとつですが、「働き方改革」により早く帰ることが推奨されている昨今、業務外に時間を割いてもらうことは案外難しかったりもします。

「仕事のことを知りたいので、飲みにいきませんか?」

とストレートな言葉で誘いたいところですが、この伝え方では「イイネ、行こう!」という返事は期待できないかもしれません。なぜなら、完全にあなた都合の誘い方であり、誘われた側はあまりメリットを感じないからです。

 オススメしたい伝え方はこれです。

◯「来週末、駅前のあの人気店の予約が取れそうなんです。一緒に行きませんか?」

この伝え方は、先ほどの「相手の好きなこと」に加え、もう一つの技術を使っています。それは「チームワーク化」

人はもともと、コミュニティを大切にする動物です。「一緒に○○しましょう」と言われると、その言葉に嬉しさを感じ、「一緒ならば…」と提案に乗りたくなるのです。