断わっておくが、何か助言されるのが決して「嫌い」だというわけではない。

 この連載でも何度か触れているが、子どものころの僕は、いわゆる普通の野球少年だった。肉体的に恵まれていたわけでも、センスが優れていたわけでもなく、アマチュア時代には目立った実績を残せなかった。自分の投球フォームに真剣に向き合ったのも、大学時代に個人トレーナーの土橋との出会いがあったからだ。

 そういう自覚があったから、僕はこれまで指導者や先輩たちからのどんな助言に対しても、謙虚な姿勢で耳を傾けてきたつもりだ。そして、アドバイス一つひとつを実践してみて、自分に合うかどうか確かめてから取り入れるかどうかを判断してきた。

ソフトバンク和田投手「不調時のアドバイスこそ受け流す勇気を」

 たとえば僕は、決め球の一つであるチェンジアップの投げ方にしっくりきていないときに、元チームメートの杉内俊哉(現・読売ジャイアンツ)にどうやって投げているのかを聞いてみたことがある。

 そのとき、彼がくれた「ストレートを投げるときと同じように、いや、むしろもっと強く腕を振って投げる」というアドバイスのおかげで、僕はチェンジアップのコツのようなものをつかむことができた。

アドバイスを「あえて受け流す勇気」

 アドバイスをしてもらうこと自体は、当然ありがたい。とはいえ、やはりそのすべてを受け入れるのは難しい。

 受け入れるかどうかの判断基準は、アドバイスの内容はもちろんだが、アドバイスする「タイミング」も大きなウエイトを占めているように思う。アドバイスされる側が聞く耳を持てないような状況だったら、その助言はなかなか受け入れられないからだ。