それは母の一言から始まった

 2002年のお正月、私はいつも通り郷里福井に帰省し、のんびりとおせちをつついていました。夕方の食事を終えた頃、母が私に手招き。正座し、ちょっと改まって曰く、「家を建てたいのだけれど…」

 私の『Project福井の家』、スタートの瞬間でした。

非日常からの発想<br />~自宅新築で鍛える「創造性」と「想像力」

 当時、実家は八百屋を中心とした店舗兼住宅。1階店舗の改装・拡大と子どもたちの成長に合わせて、住居部分はいびつになり、2階へと拡大していました。高齢の祖母が急な階段の先の2階で寝起きし、1階玄関を開けるとキッチンと食堂が丸見え、両親の寝室は一家団欒の居間でもありトイレへの通路でもある、という状態が二十数年続いていたのです。

 それにしても、母さん、なんで60才を過ぎた今頃になって?

 聞いてみれば、理由はとても単純。「今までずっと我慢してきた」「残りの人生・生活を『店舗兼住宅』じゃなくて『ふつうの家』で過ごしたい」「家自体に特に細かい要望はない。任せる」などなど。

 わかりました、あなたのその積年の恨みを晴らすために、私が何とかいたしましょう。

祖母、両親が住み、私たち子ども(3人+配偶者3人)や孫(8人)が帰省し、親類縁者(30人くらい…)が集うための家造りがこうして始まったのです。完成までの15ヵ月間、個人として膨大な時間(とお金)を投じて、学んだことは限りありません。さすが、人生最大のお買い物だけのことはあります。

 その学びの内、一部をここでご紹介しましょう。