「優れたリーダーはみな小心者である」。この言葉を目にして、「そんなわけがないだろう」と思う人も多いだろう。しかし、この言葉を、世界No.1シェアを誇る、日本を代表するグローバル企業である(株)ブリヂストンのCEOとして、14万人を率いた人物が口にしたとすればどうだろう?ブリヂストン元CEOとして大きな実績を残した荒川詔四氏が執筆した『優れたリーダーはみな小心者である。』(ダイヤモンド社)が好評だ。本記事は、書籍に収まりきらなかった内容を新たに書き起こしていただいたもの。機能する「企業理念」の必須条件とは何か? 全世界14万人をまとめたリーダーがその本質を指摘する。

一流リーダーは「カッコいい理念」ではなく、平凡でも「○○の言葉」で理念を語る。

“それらしい理念”などいらない

 企業には「理念」が必要です。
 その企業に属する人々が共通して胸の内に秘めている「使命感」「価値観」「行動原則」がなければ、首尾一貫した企業活動を実現することができないからです。共通の判断基準もないわけですから、社内のコミュニケーションもちぐはぐになるでしょうし、それでは対外的な信頼を勝ち得ることもできません。「理念」は、企業活動を最も根底で支える礎のようなものなのです。

 これは、私が改めて述べるまでもないことで、多くの企業が「企業理念」を定めていますし、その重要性を否定する経営者はいないでしょう。ただ、当たり前のことですが、“それらしい理念”をつくっても、従業員にとっては単なるお仕着せにすぎず実際には機能しません。

 立派な額縁には入っているけれど、誰も見向きもしない。悦に入っているのは経営者だけ……。そんな事態に陥らないようにするためには、旗振り役であるリーダーが、「どうすれば、従業員の心に沁み込む理念にできるだろうか?」と臆病になりながら考えることが必要だと思っています。