課長クラス以上のマネジャーにとって「会議術」は、チームの生産性を上げるために必須のスキルです。そして「品質の高い会議」を実現するためには、日ごろのホウレンソウを通じて、メンバーに身につけておいてもらうべきことがあります。それが、「報告の技術」です。「報告」とは、起きた出来事を伝えることではなく、それにプラスして必ず伝えるべきことがあります。それは何か? ソフトバンク在籍時に「会議術」を磨き上げ、マネジャーとして大きな実績を残した前田鎌利さんが執筆した『最高品質の会議術』(ダイヤモンド社)から抜粋して、ご紹介します。

「ネクストステップ」のない“報告”は認めない

 定例会議では、進捗報告、トラブル報告、プロジェクト完了報告など、常にメンバーからの報告案件が生じます。会議で最も重要なのは「ディスカッション+意思決定」ですが、全メンバーが共有すべき案件であれば、メンバーからの報告を共有することも必要となります。

 ただし、報告に費やす時間は最小限にとどめる必要があります。単に報告を聞いて満足するのであれば、わざわざメンバーを集める必要はなく、文書でサマリーを共有すれば済むことだからです。

 いえ、むしろこう言うべきでしょう。
 本来、「ネクストステップ」が示されない“報告”は報告と呼ぶに値しない、と。「ネクストステップ」とは、報告内容を受けて、「これからどうするのか?」を提案するということです。つまり、「報告+ネクストステップ」が示されて、はじめて報告と認識すべきなのです。

 私がこれを教わったのは、新社会人として右も左もわからないまま働き出したころのことです。営業担当として必死で走り回っていたのですが、ある月の売上目標未達が確定したときに、上司に正直に「〇〇円の売上未達となりました。申し訳ありません」と“報告”したのです。その報告を上司は穏やかに受け止めたうえで、クールにこう切り返しました。

上司 「未達か。で、どうするの?」
  「あ、はい。来月は必ず達成するように頑張ります!」
上司 「どうやって?」
  「……」
上司 「今月ショートした分はどうするの?」
  「……」

 要するに、私は何も考えていなかったのです。ただ、悪い情報でも正直に上司に“報告”し、謝罪をする。そして、「次は頑張る」と意欲を見せれば、許してもらえると思っていました。結局のところ、報告の本質を理解していなかったのです。

 それを上司は「で、どうするの?」というキラーメッセージで指摘してくれたわけです。いま思い出しても、情けなさや不甲斐なさで胸がいっぱいになるのですが、仕事をするうえで極めて重要なことを教えていただいたと、深く感謝しています。