世論は受動喫煙規制支持が
圧倒的多数

 健康増進法改正案について、昨年1年の間に2つのグループが大規模な署名活動を実施している。JT(日本たばこ産業)が、受動喫煙規制に反対する署名活動を展開し、これは約116万筆を集めた(2017年4月)。一方、これに対抗したのが、日本医師会である。医療関係者だけでなく、患者団体などからも署名を募り、約264万筆を集めた(同年8月)。

 現在、成人喫煙者率は20%弱であり、日本医療政策機構が実施した世論調査の結果を見てみると、非喫煙者の73.4%は受動喫煙を防止すべきと考えているのみならず、喫煙者であっても51.6%が受動喫煙防止に賛成している。このようなことを考えれば、世論は明らかに受動喫煙を防止できる厳しい規制を求めていると言えよう。

「自分の周辺エピソード」で政策を形成する
前時代的な一部の国会議員たち

 こうした科学的根拠や世論の動向にもかかわらず、自民党内では依然、受動喫煙防止に対する慎重論が目立った。この間、ある記憶に残る事件が起きた。自身も元がん患者であった自民党の三原じゅん子議員が、自民党の厚生労働部会で、治療をしながら働くがん患者への配慮を求める発言した際、同じく自民党の大西英男議員が「(がん患者は)働かなくていいんだよ!」とヤジをとばしたのである。

 厚生労働部会は通常非公開で行われるが、後に会議の音声データがマスコミに提供されたこともあり、一気に「炎上」騒ぎとなった。「(がん患者は)働かなくてもいいんだよ」という発言も看過しがたいが、筆者らが驚いたのは大西議員の「私はもう50年、タバコを吸い続けています。そしてわが家でも、自由にタバコを吸い続けておりまして、子どもが4人、孫が6人、一切誰も不満は言いませんし、みんな元気に頑張っております」という発言である。

 大西議員だけでなく、科学的な根拠を軽視することも甚だしい国会議員の発言は枚挙に暇がない。2017年2月16日の朝日新聞の報道「受動喫煙対策、煙る永田町」によると、「分煙社会を洗練、成熟させるのが正しい方向。さらに強制すれば、地下に潜ってよからぬ勢力がはびこる」とか、「(飲食業が)『経営が成り立たない』と言っているのに、そのままにするのは(厚労行政として)完全に矛盾している」などという発言が与野党問わず聞かれている。このように、自身の周辺のエピソードや都合よく切り取った「地元の声」のようなもので、国全体の政策形成をしようとしているのである。まさしく前時代的というほかない