慶大学内ベンチャーSIM-Driveの
第1号車と第2号車が都内で走行

誰も書かないEVベンチャーの「本質」<br />――慶大発SIM-Drive先行開発事業の<br />第2号・第3号は成功できるか?東京プリンスホテルの駐車場。特設コースで、「SIM-WIL」(手前)、「SIM-LEI」(中央)、電動低床フラットバス(奥)が走行した。  Photo by Kenji Momota

 2012年3月28日(木)、東京タワーにほど近い東京都港区芝の東京プリンスホテル前駐車場。そこに、3台の電動移動体が揃い踏みし、各車が関係者を同乗させて試験走行を行なった。この3台とは、慶應義塾大学環境情報学部・清水浩教授が代表取締役を勤める学内ベンチャーのSIM-Driveが開発した先行開発車だ。

 白く細長いボディのクルマが既に各メディアでも紹介されている同第1号の「SIM-LEI」。同車の開発を基に2014年の量産化を狙うのが、同日に世界初披露されたブルーの第2号「SIM-WIL」だ。さらに、市街地走行向け大型バスとして開発された電動低床フラットバス(※)が加わった。

 バスは同駐車場外まで走行したが、「SIM-LEI」と「SIM-WIL」は駐車場内で約300mほどの直線での加速・減速と、180度コーナーでの低速旋回を行なった。

「SIM-LEI」と「SIM-WIL」の走行状態を比較すると、主電源ONの状態でのインバータ、モータ等の電子機器の音に、EV特有の高周波音が少なく静かだ。アクセルONの状態でもそうした高周波音は気にならないレベルだ。2台の最大の差は、乗り心地だ。今回の試乗では、ほぼ停止状態から約70km/hまでフル加速したが、その中間地点で路面にギャップがあった。

 それを乗り越える際、「SIM-LEI」ではドスンッという感じ。対する「SIM-WIL」はトヨタ、ホンダなどの量産型小型ミニバンのように、滑らかにギャップを通過した。「WIL」の最高速度は180km/h、0~100km/h 加速は5.4秒、満充電での巡航可能距離は日産「リーフ」の2.2倍の351kmだ。

 この試乗会の4時間程前、午前10時から開催された記者会見で清水氏は、「私の過去30年間の電気自動車研究のなかで、最高のモノができた。この世界最高の電気自動車によって、皆さんには、時代が変わりそうだということを認識して欲しい」と語った。

※連載第98回「“電気バス”は日本の公共交通を担えるか?ついに路上を走り始めた慶大発ベンチャーのEVバス」