困難を耐え忍ぶだけでなく、
新たな学習を成し遂げるチャンスへ

 大震災において、明るい兆しと言われた点の一つに、日本人の道徳観、粘り強さが健在だったことが挙げられます。災害直後から群集心理などによる暴動もほとんど起こらず、多くの日本人が秩序を守りながら必死に耐えた姿は、世界中に報道され深い感動を呼びました。

 しかし、大災害だけではなく、経済、政治、社会体制など多くの面で日本は難問を抱えており、多くの困難を「耐え忍ぶ」だけで打開できるかは大いに疑問です。危機的状況から将来の成功を生み出すためには、過去を乗り越えることを目標に、新たな学習を成し遂げることが大切です。

 そのために重要なことは、日本と日本的組織で繰り返されている失敗を突き止め、再発を防止できる知恵を得ることです。日本軍は大東亜戦争を、極めて日本的な発想で戦い、緒戦の快進撃を除いては敗北を続けたのですから。

 日本的組織を分析した『失敗の本質』が、初版からずっとベストセラーであり続けているのは、私たち日本人が知りたい答えを示唆しているからだと思われます。

 一方で、名著『失敗の本質』は、28年間読み継がれ、累計52万部のベストセラーであるのに、なぜ私たちは名著の教えを習得できていないのか?『失敗の本質』がやや難解な書籍であり、読み解くことが難しいこともその一因かもしれません。