融通の利かない人が
大好きな言葉は?           

 本書の著者・榎本博明氏によると、このような融通の利かない人が大好きな言葉は、「コンプライアンス」だといいます。

 この言葉が普及してから、自分に存在意義を見出したのか、水を得た魚のごとくイキイキとしてしまった感すらあるといいます。何かにつけ規則を持ち出し、「コンプライアンスを甘く見てはダメだ」と言っては、柔軟に動こうとする人の足を止めるのです。

 こうした融通の利かない人のパフォーマンスはどうでしょうか。過去の成果を見ても、パッとしていないことが多いのではないでしょうか。

 実は、このような人は、自信のなさを隠し持っていることが多いといいます。自分の判断力にきわめて自信がないというのです。その原因は「自由な状況で、自分が臨機応変に判断をすれば、判断を間違ってしまうのではないか」という恐れを、本人も無自覚なままに抱いていることにあるそうです。

 そして、その「自分の判断力に自信が持てない」という不安を、規則をよりどころとすることで埋めているといいます。つまり、コンプライアンスや社内規則を頼りに、「自分で考える」ことを放棄しているのです。

 規則でがんじがらめになっていれば、自分の頭で考えて、臨機応変に判断する、ということをせずに済みます。自己防衛のために規則にしがみついているともいえます。

「コンプライアンス」は、いざという時の言い訳にもなります。もし、判断が間違っており自分が責められるような事態になったとしても、「コンプライアンスを優先させた結果」「規則に従って物事を進めた結果」と言えば、規則のせいにできるのです。

 コンプライアンスにこだわる人が、概して能力的にもパッとしないのは、このような自信のなさに縛られていることと無関係ではないのでしょう。

 また、このような形式や手順にこだわるタイプは、論理能力が低いことが多いといいます。事情を論理的に説明できる人であれば、「この場では、契約を取ることが先決だと思ったので、社内手続きは後回しにしました」などと説明し、周囲の人を説得することができます。

 しかし彼らは、周囲を説得するだけの論理能力にも自信がないため、形式や手順にしがみつくことになります。