経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第2回】 2012年4月10日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【佐々木俊尚氏×武田隆氏対談】
2012年、ソーシャルメディアに「何」が起こっているのか?(後編)

IT・メディアの分野に精通するジャーナリスト・佐々木俊尚氏と、ソーシャルメディア・マーケティングの第一線で活躍するエイベック研究所 武田隆氏。この対談の前編では、現状、多くの企業がソーシャルメディアを活用しきれていない原因はどこにあるのかを分析していただいた。
後編となる今回、お2人の話題はいよいよ核心へ。企業がソーシャルメディアを通してユーザーと真につながり合うためには、いったいどうしたらよいのだろうか?

企業が「メディア」になっていく?

佐々木前回の対談で情報圏域が細分化されビオトープ(小さな生息空間)になっているという話をしましたが、実は消費者から見て「自分の求めるビオトープがどこに存在するか」を見極めるのはとても難しいことですよね。

武田:フェイスブックのようなSNSだと狭くて窮屈になるし、かといって、インターネット全体に発信したところで、相手にされなければ寂しい思いをする。こうした状況のなか、企業コミュニティは興味深いポジションにあるのではないかと考えています。

 たとえば、カゴメの企業コミュニティでは、カゴメが提供するトマトジュース専用トマト「凜々子(りりこ)」の苗を自分で育成する消費者たちが交流しています。狭すぎず広すぎず、ちょうどいい紐帯が生まれる。現実世界やほかのSNSでは、なかなかありえないことです。フェイスブックで毎日トマトの話題ばかり投稿していたら、変わった人だと思われる(笑)。

佐々木俊尚(ささき・としなお)
作家・ジャーナリスト。
1961年兵庫県生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。毎日新聞社、月刊アスキー編集部を経て2003年に独立し、IT・メディア分野を中心に取材・執筆している。『「当事者」の時代』(光文社新書)『キュレーションの時代』(ちくま新書)『電子書籍の衝撃』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。
総務省情報通信審議会新事業創出戦略委員会委員、情報通信白書編集委員。

佐々木:なるほど。企業が特定のテーマについてのメディアになっていくというのは、すごくアリなんじゃないかと思う。

 アメリカの事例ですが、自動車メーカーのブランド・ディレクターが、デザイン系のニュースサイトで、自動車のデザインをテーマにキュレーションをしています。

 サイト側としては、情報量が増えて質も上がるので嬉しい。ユーザー側もいい情報が入ってくる。同時に自動車メーカー側としては、「自分の会社はこんなに自動車のデザインに通じた専門家を抱えている」と訴えることで、ブランドの価値が上がる。

 今までのマスメディア時代には企業はジャーナリストを通じてしか情報を伝えられないという状況があった。けれど、オウンドメディア時代になってくると、企業が自ら中心になって情報をやりとりすることが起きる。

武田:企業が既存のアゴラに入っていくのではなく、自分のアゴラを形成するわけですね。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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