北朝鮮の首都・平壌は「ショーウィンドー都市」とよく言われる。案内員という名の監視係がぴったり着いて回り、単独での自由行動は許されない。政治的に自由な発言が許される国でもない。「行っても表面的なものを見せられるだけだ」という人も多かった。

 それなら徹底的に表面を見よう、髪の毛1本、顔のニキビやえくぼ、服のしわ、ボタンの付き方まで、目に見えるものは細部まで逃さず形に残し、目の前にある北朝鮮の現実と向き合おうと決めた。

Photo:Yusuke Hishida

 北朝鮮で写真を撮ったら、韓国に飛んで同じ構図の写真を撮った。年格好の同じ人や気象条件、建物や山河の配置まで同じものを探して、何度も足を運んだ。

 北朝鮮の人たちを撮影すると、金日成・金正日バッジをつけることに非常にこだわることに気づいた。では、バッジをつけていないときはどんな表情を見せるだろうか。100kmと離れていない北朝鮮・南浦と韓国・仁川。海岸線がつながった南北の海水浴場の風景をとらえた。

海岸線がつながった南北の海水浴場Photo:Yusuke Hishida

 週末を楽しむ人々。思春期の少年の顔に表れたニキビ。赤ん坊を抱く母親の視線。政治体制や思想、文化は大きく違っても、人間の楽しみや悩みに大きな違いはない。

 しかし、異質さや脅威が強調されるあまり、そこに住む人間の存在は置き去りにされてしまいがちだ。