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連載経済小説 東京崩壊
【第12回】 2012年4月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
高嶋哲夫 [作家]

負け犬

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第1章

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 「1年と2ヵ月ぶりですね」

 森嶋が帰宅の用意をしていると、植田が近づいてきた。

 「一度お会いしましたね、森嶋さん」

 「ええ、ワシントンで」

 彼も覚えていたのだ。

 「あなたが首都移転構想のレポートを出したんですね。でも、どうしてこの時期に」

 「ハドソン国務長官が総理と会見しました」

 「知っています、あなたが通訳を務めたんでしたね。やはりアメリカの要求なんですか」

 「そうとも違います。東都大学高脇准教授のレポートは」

 「読みました。だから、ツテを頼って、国交大臣にこの極秘チームのオブザ―バーという形で参加させてもらうことになりました」

 極秘チームに力を入れて言ってかすかにほほ笑んだ。極秘と言いながらも、すでに極秘でもないのだろう。

 「北海道選出の衆議院議員、39歳、当選3回、予算委員会でしたね」

 「知ってたんですか」

 「知りませんでした。でも、あなたが部屋に来て1時間後には、あなたのデータはチーム全員が知ってました。誰かからメールが来ました。チーム全員への一斉メールです」

 植田は苦笑した。

 「政治家には用心しろということですか」

 「情報量は多いほどいいですからね」

 「官僚らしい発想だ。しかし、このチームに集まった者たちはある意味勇気がある」

 そう言って笑みを見せた。

 どことなく政治家らしくない男だ。

 そのとき、植田の携帯電話が鳴り始めた。

 「私は、事務所に帰ります。勉強させてください」

 植田は、森嶋に頭を下げると部屋を出て行った。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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