新入社員は「やりたい仕事ができない」と退職する可能性も

新入社員が陥りがちな
「やりたいこと探し」の旅に終着駅はない

 ゴールデンウイークが過ぎた5月半ばは、研修を終えた新入社員が現場に配属されて1ヵ月くらい経った頃。五月病にかかる人たちが出てくる時期でもあります。

 この時期、新入社員の悩みや不満としてよく聞くのが、「やりたい仕事とは違っていた」「自分が思い描いていた仕事ではない」といったものです。そして、「やりたいこと探し」の旅に出てしまう新人が毎年発生するわけですが、これほど無駄なことはありません。やりたいこと探しの旅に終着駅はないからです。

 入社した年の5月の段階で、自分のやりたいことが仕事としてできている人は世の中で非常に少数だと思います。そもそも社会人デビューしたばかりの段階で、自分が本当に何をやりたいのかわかっている人は少ないでしょうし、あるいはやりたいと言っていることが本当にやりたいことなのかという問題もあります。

 なかには、早い段階から自分が本当にやりたいことに出合い、着実にその目標に向かって邁進している人がいるのも確かです。わかりやすいのは医師や建築家で、これらの職業に就くには大学の学部を選択する時点で、将来やりたい仕事を決断する必要があります。

 何らかの分野で若いときから頭角を現す人は、早い時期からやりたいことに出合い、その実現のために必要なことを考え、努力を重ねています。そうした事例はストーリーとしてとてもわかりやすく、メディアで取り上げられやすいこともあって、普通の人でも「ああいうふうに自分もやらなければいけない」と思い込み、焦ってしまう原因になりがちです。しかし、そんな人は世の中の一握りに過ぎません。