有給、福利厚生、ボーナス……
インハウスならではのメリット

 しかし、10年で10倍まで増えたとはいえ、インハウスローヤーはまだまだ弁護士界ではマイナーな存在である。日本にいる弁護士全体のまだ2%に過ぎない。なぜなら、多くの弁護士たちは、街で事務所を構え、市民に寄り添って市民の法律ニーズに応えるか、企業の法律ニーズを法律事務所に所属する弁護士として応えることを思い描いて、法曹界を目指したてきたからだ。なかには、労働者を弁護する立場にたち、企業に立ち向かうことをイメージしている若手もいるだろう。あるいは、大手ローファームに所属して、企業間の提携やM&Aに関わる弁護士像をイメージしている者もいるだろう。会社員としての弁護士は、ロールモデルも存在せず、イメージを持ちづらいというのも仕方がない。

 しかし、先に挙げた外資系銀行に勤める弁護士の話を聞くと、新たな弁護士像が見えてくる。やりがいについて、A氏こう説明してくれた。

「例えば、コンプライアンスについて産業界のニーズは高いが、顧問弁護士として企業のコンプライアンスに関わる場合、表面的にしかその企業のコンプライアンス徹底のプロジェクトに関わることができない。しかし、企業内にいれば、細かな実務レベルにどうやって落とし込むかというところまで、深く関わることができる。これは外部にいてはできないことだし、非常にやりがいを感じている」

 また、勤務している会社が銀行ということもあり、金融庁と銀行業法やさまざまな規制について、どのように解釈したらいいかなどの重要な仕事を任されており、それもやりがいになっているという。

 他にも会社に所属する利点を、A氏は存分に感じているようだ。

「福利厚生があるし、有給休暇が取得できるので子どもの授業参観のために使うことができる。ボーナスもある。また3月に確定申告をする必要がなくて楽。これらは以前勤めていた法律事務所では得られないことだ。それになんと言っても“営業活動”をしなくて良い。事件を受任するために気を使ったりする必要がないのがうれしい」

 気になる年収は、妻の説得が必要だったものの、下がらなかったという。いまではインハウスローヤーがすっかり気に入っているという。