弁護士増員政策を支えるための
インハウスローヤーではない

 考えなければならないのは、弁護士界がこの新たなキャリアパスの誕生に、対応しきれているかどうかだろう。

 2009年11月に実施された、「企業内弁護士の採用に関するアンケート集計」では、企業側から司法修習に対する希望として、「企業法務を実習に取り入れる」「企業内での修習ができるようにしてほしい」という声があり、またロースクールに対して、「企業法務への就職を念頭に置いたコース、カリキュラムを用意すべき」という声が複数寄せられている。

 一方、若手弁護士らは、「企業法務に関しては司法修習期間に、ほとんど教わらない。会社法や企業内での活躍する弁護士のイメージも湧かない。興味もわかない」と話す。

 これらの声からは、産業界の需要に合わせた供給ができていないということが読み取れる。このギャップを埋められるように、弁護士の養成制度の見直しも検討すべきではないだろうか。もしかしたら、就職難の解決の糸口が多少なりとも見えてくるかもしれない。

 ただし、第3回で、2001年の司法制度改革意見書において「年間合格者数3000人」を目指すことが明記され、この10年間それに向かって突き進んできたことを述べた。増加の根拠の一つには、インハウスローヤーの増加が語られてきており、弁護士界も企業の弁護士採用の増加を期待した。就職難という問題が顕在化したいま、弁護士界からは「企業にもっと弁護士がいていいはずだ」と、まるで企業がもっと弁護士を雇えとも取れる声が聞こえる。

 しかし、3000人合格を目指したことで引き起こされた「就職難」と、「インハウスローヤーの増加」「企業の弁護士採用」とは一緒の文脈で語られるべきことではないだろう。そもそも、この弁護士人数増加の旗印であった3000人という数字に、明確な根拠はない。一方で、企業は純粋に自社の戦略に合わせて人事を行う。弁護士界の根拠のない人数論は、弁護士界というインナーサークルの論理であり、企業には、まったく通用しないのだ。

 本来的には、企業側にどのような法律ニーズがあり、どのような弁護士が必要なのかを精査し、それに対応した法曹養成制度とは何かという結論を見つけることだ。弁護士界側と企業側のギャップこそ、問題の本質なのではないだろうか。根拠のない人数論に縛られ、企業で働く弁護士が多い、少ない、もっと企業は雇うべきだという議論からは、何も生まれない。