英語ができないと1000分の1の情報しか入ってこない

 教養や歴史観に加えて、この多様化の時代には、さまざまな国の人が集まるグローバルな環境の中でチームを育て上げられるリーダーシップが必要です。さらに、財務諸表を読みこなせる「BS・PLリテラシー」、情報を効率的に入手し、分析、判断、決断できる能力という意味での「ITリテラシー」も身につけなくてはなりません。

 それから、非常に重要なのはコミュニケーション能力です。「ビジネスの失敗の80%はコミュニケーションの不備に起因する」という言葉がありますが、グローバル化が進み外国人と相対する機会が増えているなか、コミュニケーション能力はさらにその重要性を増していると言っていいでしょう。

 コミュニケーションには「説得のコミュニケーション」と「納得のコミュニケーション」があります。ロジカルに数字の裏づけをもって行うのが「説得」。それが相手の腹に落ちるのが「納得」ですね。人は論理により説得され、感情により納得するものです。「納得」まで狙ったコミュニケーションができなければ、真のリーダーにはなりえないと思います。

 その意味でも、リーダーには「あの人についていきたい」と思われるような人柄も必要でしょう。論理的な説得とは矛盾するようですが、「無茶苦茶な話だけれどあの人が言うんだからしょうがない、やるか」と思わせるような「信頼」と「尊敬」を得られてこそ、人を率いることができるのです。

 もう1つ、グローバルリーダーには「語術力」も欠かせません。ビジネス界の共通語である英語をマスターすることは、世界で勝負するための前提条件と言えます。最低ラインは、TOEIC850点です。これは、アメリカで苦労なく日常会話ができるレベルですね。外国人と対等とは言わないまでも、喧々諤々と議論できるレベルを狙うなら、940点以上が目安になるでしょう。さらに欲を言えば英語以外にもう1つ、中国語などにも挑戦してほしいところです。

岩瀬 英語が必須だという新さんのご意見には、私も賛成です。特に英語の重要性を感じるのは何かを調べようとするときで、私の感覚では、英語の情報量は日本語の1000倍くらいあります。英語がわかれば、圧倒的に多くの情報を手に入れることができるんです。

 ですから、英語を話したり書いたりするのが苦手だという人も、まずは英語で情報収集できるよう、「英語を速く読む力」だけは早急に身につけるべきだと思います。

 語学力というのは、時間をかけて量をこなせば誰でも身につけることができるものです。ニューヨークに行くと、非英語圏からの移民のタクシードライバーがよく目にとまりますが、英語でそれなりに会話をこなしています。

 彼らは特別に賢いから英語ができるようになったのではありません。英語に触れる時間がたくさんあれば、誰でも読んだり話したりできるようになれるんですよね。