「選手を育てるのは監督の仕事ですが、しかし結局のところ、その選手が伸びるかどうかは本人次第です。人は育つときには自分の力で育っていくはずです。ただぼくにできるのは“彼なら伸びる”と信じて活躍できる環境をつくってあげることだけです」

「選手が全力を出し切る環境を整えたとしても、結果が出ない場合もあります。しかし、全力を出せる機会を与えられたのに結果が出なければ、選手は人のせいにできませんから、自分に何が足りないかを本気で考えるようになります。それが成長のきっかけになります」

 また、次ようなコメントもある。

「ぼくが監督として一番に考えるのは“どうすればこの選手を輝かせることができるのか、何がこの選手のためになるのか”ということです。親のように選手の可能性を信じ、将来を見据えたうえで今、ベストな選択を考えるのです」

 実際、こうした起用で大谷、清宮以外でも成長している日本ハムの選手は多い。たとえば近藤健介。キャッチャーだったが、その卓越したバッティング技術を生かそうと、負担の少ない内野手にコンバートし才能を開花させた。NPB史上初の4割を打てる可能性もあるといわれている(昨年は故障のため57試合出場に止まったが、実際4割1分3厘の高打率を残している)。今季も現在故障で欠場中だが、4割打者が出たら大騒ぎになるのは確実だ。

 栗山監督が尊敬し、目標としている監督は三原脩氏だという。三原魔術と呼ばれたように選手の調子だけでなく、持っている運まで考え、予想を超えた選手起用や戦術で1950年代の西鉄3連覇などを成し遂げた名将だ。

 三原氏は数多くの優勝経験を持っているが、大事なのは勝つことだけでなく、野球の面白さを観る者に伝えることだったという。「野球は筋書きのないドラマ」というのは三原氏が残した言葉だが、栗山監督も「プロ野球にとって何より大切はものは、お客さんを喜ばせることだ」と語っている。

 この考え方があるから、大谷の二刀流が実現したのだろうし、若い力が育ち、話題を呼ぶ選手になっていくのだろう。

 大谷の活躍に胸躍らせることができる我々は、栗山監督という名指導者に感謝しなければならない。

(スポーツライター 相沢光一)