この手話を通訳するサービスには、「聞こえない人が、その場にいない聞こえる人に電話する場合(電話リレーサービス)」と「その場に聞こえる人と聞こえない人がいて、対話を通訳してもらう場合(遠隔手話サービス)」の2種類がある。文字通訳サービスもある。

ろう者の中には
日本語の読み書きが難しい人もいる

 病院の受付には、耳が不自由な人のために、筆談の準備はされている。とはいえ、筆談の場合、長文のやりとりは難しい。また、あまり知られていないことだが、ろう者の中には、日本語での読み書きが困難な人もいる。手話と日本語は「まったく別の言語」と言われるほど、文法や語彙が異なる。

 これまで、ろう学校の教育では手話が禁止され、話し手の唇の動きを見て、言葉を読み取る練習をしてきた。「口話(こうわ)教育」という。

 手話で教育を受けた場合、「社会に出たとき困るから」と考えられてきた。だが、口話教育では日本語の習得に限界があることが歴史的に明らかになり、今、ろう学校で手話による教育ができるよう、全国的な推進運動が展開されている。

 前出の皆川さんも、乳がんの治療を10年間受ける中、病院のスタッフとのコミュニケーションに違和感や悩みを抱えてきた。

 皆川さんは病院へ行くとき、事前に地域の手話通訳派遣を予約し、同行してもらう。がんの治療のため「チーム」も結成してもらった。それでも、緊急のときは手話通訳派遣が間に合わず、診察室で医師や看護師とのコミュニケーションにとても苦労したそうだ。

 例えば、こんな出来事があった。

 乳がんの手術後、皆川さんは症状がひどくなり、主治医から「明日、病院へ来てください」と言われたことがあった。手話通訳の依頼が間に合わず、1人で病院へ行った。

 病院では、看護師の話を口の動きで読み取ろうと「耳が聞こえないので、マスクを外して話してもらえますか」と頼んだが、看護師にはその理由がわからなかったため、対応してもらえなかった。