また、カーテンで仕切られた部屋で待っていたら、急に看護師がカーテンを開けて現れ(耳の聞こえない人にとっては、「突然の出来事」になる)、いきなり腕の太さを計測した後「リンパ浮腫です。マッサージを受けに行ってください」と書かれた紙を渡された。さらに、看護師がすぐ部屋から出て行ってしまったため、「聞きたいことがあったのですが質問できず、不安なまま、家に帰りました」と振り返る。

 皆川さんは「英語だけしか使えない病院へ行ったようなものです」と言う。

手話でやりとりできないから
病院へ行くことを我慢する

 テレビ電話による手話サービスを提供する民間の会社は、現在、国内に少なくとも3社ある。その1つで、シュアール代表取締役の大木洵人(じゅんと)さん(手話通訳士)が起業したのは、大学時代、ろうの友人が「病院に行くのが大変なんだ」と話していたことがきっかけだった。病院へ行くためには手話通訳士の同行が必要なので、友人は「体調が悪くなっても、できるだけ我慢してやり過ごす」と言った。

 大木さんは「筆談やジェスチャーで用事が済めばいいということではなく、ろう者が知りたい情報を入手でき、不安がなくなったときに初めて『情報が保障された』と言える」と気づき、テレビ電話による遠隔手話サービスの会社を立ち上げた。

 全日本ろうあ連盟情報・コミュニケーション委員会の小椋武夫委員長はこう言う。

「当連盟では、病院で診察時、医師から病気や治療の話を聞く、あるいは、精密検査を受ける等、複雑なやりとりをする場合、基本的には病院における手話通訳の配置や手話通訳士の派遣を要請しています。その場でお互いの表情を見ながらやりとりできるほうが安心だからですね。一方、病院の予約、簡単な検査、薬の説明等の場合は、テレビ電話を使った手話通訳サービスを利用すると便利でしょう」