服飾史家の中野香織さんはケンブリッジ大学でダンディを研究したひと。スーツが約350年も永きにわたり、男性服の中心に君臨しつづける理由のひとつに「自由」があるのでは、と。スーツの考察と最新のスーツを紹介します。

服飾史家の中野香織さんにスーツについて聞きました【PART1】「自由を勝ち取る服」GIORGIO ARMANI
左/スーツ 30万9000円~、シャツ 6万9000円~、ネクタイ 4万1000円~、チーフ(オーダー価格)2万4000円~ (すべて、ジョルジオ アルマーニ ※価格はすべてオーダー価格)
右/スーツ 30万9000円~、シャツ 6万9000円~、ネクタイ 4万1000円~、チーフ 2万4000円~、ベルト 3万7000円(すべてジョルジオ アルマーニ ※価格はすべてオーダー価格)時計 122万5000円(ジャガー・ルクルト)

「自由」は、英語のlibertyとfreedomの2語を、明治維新の頃に「自由」と訳したわけですけれど、この2語、実はニュアンスが若干異なります。「スーツの自由」というお題をいただいて、すぐに浮かんだのは、こちらの「自由」にはliberty(リバティ)がお似合い、ということです。

 libertyというのは、圧政とか拘束があって、そこから勝ちとられた解放や自由を指します。アメリカ合衆国の独立100周年を記念してフランスから送られた自由の女神は〝Statue of Liberty〟、フランス革命を描いたドラクロワの絵画は〝La Liberté guidant le peuple(民衆を導く自由の女神)〟と呼ばれます。

 では、ビジネスマンにとって制服だとされるスーツに自由なんてあるのでしょうか?

GIORGIO ARMANI/自分好みの1枚を仕立てる「メイド トゥ オーダー(MTO)」

 昨年始まったオーダーシステム「メイド トゥ オーダー(MTO)」とは、いわゆるパターンオーダーである「メイド トゥ メジャー(MTM)」をより簡潔にしたシステム。

 採寸不要のこのシステムは、スーツの場合、クラシック、スリムフィットの2型からどちらかを選び、さらに生地、ライニング素材、パーツ類や着丈などを相談しながら決定する。そして、その仕様をすぐさまミラノへ送りイタリアで製作。およそ1カ月で日本へと送られてくるというもの。MTMが50~70日かかることを考えると、かなり早く完成するというわけだ。

 左は、クラシックタイプで、カッチリとしたショルダーとゆったりめのフィット感が特徴。年齢や体型を選ばないオーソドックスさが魅力の一着だ。一方、右はシャープなラインが若々しさを演出する、スリムフィットのスーツである。どちらも、同素材の既製服に10%金額を上乗せするだけで作れるという。表地は約300種類の中から選べるので、自分らしい一着が欲しい人には最適である。

ジョルジオ アルマーニ ジャパン TEL:03-6274-7070 ジャガー・ルクルト TEL:0120-79-1833