単なるブームではなく
未来をつくっていくために必要な視点

宮台 僕は、85年から始まった出会い系メディアも研究しているんだけど、その歴史をたどると、だいたい3年単位で次のステージに移行しているのがわかる。出会い系はテレクラ→♯8301→♯8501→Q2→Q2ツーショット→Q2伝言→インターネットと移り変わっていった。

 どうしてそうなるか。

 最初は、意識のある人間がメディアに関わりだす。そこでは実りのあるコミュニケーションが展開される。だから、後に評判がたってくる。すると、有象無象が集まってくる。彼らにはスキルもないし価値観も甘いので、デタラメをやり始める。それでいわゆる「荒れてくる」わけだ。

 次に、リーダー層たちが抜けると、その頃にまた新しいメディアが登場する。そこでも最初は楽しめるんだけど、しばらくすると、評判が有象無象を呼んでくる――同じことの繰り返しなんだよ。3年単位で25年間それを繰り返しているのを見ているからね。

 それと同じことがシェアハウス、というよりトレンド全般にはいえるんだ。

 そうならないために大切なキーワードは「価値」だね。

 まず「価値」を訴える。例えば、自分たちのシェアハウスには、従来のものにはない濃密なコミュニケーションをしたいんだ、とね。それは、俺たちはプログラミングをやる集団だとか、アート集団なんだとか、なんでもいい。

 ある価値、フレームを出したらそのフレームをベースにして人を選ぶことが重要になる。それは、リーダー層や共同作業やっている人たちが独断と偏見で選んでいけばいい。いわゆる「フォロワー切り」の勇気を持つことだ。

 便利、快適、寂しくないとか、いいとこ取りをしたがる受け身の人たちは悪いけどよそでやってくれ、と宣言すればいい。そういったことをやっていかないと、不動産業界の事情から生じるディベロッパーの広告宣伝に踊らされてやってくる人たちの中で、自治や相互扶助や価値を目指す共同体は埋没していってしまうよね。

 業者が主導しているシングルマザーたちのシェアハウスがある。そこでも一つ気になっていることがある。

 相互扶助の意味が単なる孤立した弱者的家族の寄り集まりなのか、そこで新しい家族や場、共同体を作ろうとしているのか。すごい違いだよね。そこを敏感に区別している人間が集まって、価値を訴えていって欲しいと思う。

シンペー ただの慰め合い、傷の舐め合いの関係からは何も生まれませんよね。

「価値観が共有できる仲間とともに何かをつくりだす」とか「お互いの知識・技術を交換し合う」とか、成長意欲が前提になっていないと。依存し合う関係ではなく、互いに自立していなければと僕も常に思っています。だから、よるヒルズも安易にのれん分けしていないんですし、こうやって何に価値があるのかを探り、自分の言葉で発信するようにしています。