「精神障害者雇用義務づけ」のそもそもの難しさが分かる3本の映画

古今東西の映画を通じて、社会保障制度の根底にある考え方や、課題などを論じていく連載「映画を見れば社会保障が丸わかり!」。第10回は精神障害を巡る制度改正を契機に、昨年末に日本で公開された『彼女が目覚めるその日まで』、2011年製作の『ツレがうつになりまして』といった映画の描写を通じて、いくつかの論点を考えていきたいと思います。(ニッセイ基礎研究所准主任研究員 三原 岳)

4月から法定雇用率が改正され
精神障害者の雇用が法的義務に

 今年4月から一定規模以上の会社に対し、精神障害者の雇用を義務付ける法令が改正されました。具体的には、従業員に占める一定割合以上を障害者とするよう義務づける「法定雇用率」が改正され、精神障害者の雇用が法的義務の対象に加わりました。

 ここで「精神障害」と聞くと、皆さんはどのようなことを感じるでしょうか。「統合失調症」「てんかん」「うつ」といった病因を見ると、「自分には無関係」という印象を持つかもしれません。

 でも、ここで考えてみてください。誰が、どんな基準を使い、どのように判断した結果、「精神に不具合がある」と見なされるのでしょうか。ケガなどの外傷と違って精神の不具合は外見的に見えにくく、実は「異常」「正常」の線引きは明確とは言えないのではないでしょうか。