経営×ソーシャル
識者に聞く ソーシャルメディア進化論
2018年6月5日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役 兼 最高経営責任者]

20世紀の勝者企業は「カオスの時代」をどう生き抜くか

【池上高志氏×武田隆氏対談2】

20世紀は、計画通りモノを生産できた会社は成長でき、予測通りに広告宣伝を成功させた会社が勝ってきた。しかし今の世の中はどうだろう。インターネットによってありとあらゆるものがつながり始めて、不確実性が格段に上がった。これまでのセオリーが通用しなくなったことを実感している企業は多いのではないだろうか。予測通りにいかなくなった今の時代。これまで20世紀の勝ちパターンで栄光を手に入れてきた企業たちは、この不確実の時代をどう生き残ればよいのか。前回に続き、カオス理論を専門とする池上高志 東京大学教授に聞いた。

「全部入り」でないと
消費者の姿は見えてこない

武田隆(以下、武田) 前回、共通原理を探したり、シンプルなモデルを立てたりすることから考えるのではなく、「全部入りラーメン」のアプローチ、つまりそこにあるデータすべてを拾い上げて見ていくことで、初めてわかることがあるというお話がありました。それは、現在のマーケティングにもつながるところがあると思うんです。

池上高志(いけがみ・たかし)
1961年、長野県生まれ。複雑系・人工生命研究。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士(物理学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科・広域システム科学系・教授。人工生命(ALIFE)に新たな境地を切り拓き、研究を世界的に牽引。アート作品でも注目される。著書に『動きが生命をつくる』(青土社、2007年)、『生命のサンドウィッチ理論』(講談社、2013年)、『人間と機械のあいだ』(講談社、2016年)など

池上高志(以下、池上) ほう、どういうことでしょうか。

武田 これまでのマスマーケティングの世界では、「商品やサービスの利用者を1つに絞ることができれば勝てる」という考え方でした。商品・サービスの架空のユーザーである「ペルソナ」を設定したり、F1層、M2層などと消費者を性別や年齢などで切り分けたりして、顧客像を1つに絞って戦略を立ててきたのです。

 ところが近年、市場が成熟した結果、そのモデルからこぼれ落ちる消費者のリアルや個性が目立つようになってきました。

 シンプルに理解することでマーケティング戦略をうまく立てられる、というパラダイムが変わりつつあると思うんです。これは、世界が豊かになり、複雑化してきたからでしょうか。



武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役 兼 最高経営責任者]

日本大学芸術学部在学中の1996年、前身となるエイベック研究所を創業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発し、複数の特許を取得。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。これまでに森永乳業、ライオン、資生堂ジャパンをはじめ、300社超のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア(矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリンと大阪に支局を開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、ロングセラーに。また、CSR活動の一環としてJFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」のパーソナリティも務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


識者に聞く ソーシャルメディア進化論

史上最も多くの人々がつながり合った今、私たちを取り巻く社会はどう変化していくのか? NTTドコモ、セブン&アイ、資⽣堂ジャパン、ライオン、森永乳業をはじめ300社超のマーケティングを支援してきたクオン代表 武田隆氏が、各分野の有識者とともに変わりゆくインターネット時代の未来を読む。

「識者に聞く ソーシャルメディア進化論」

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