「明日やろう」「新年度から始めよう」「締切が近づいたら手をつけよう」……私たちが、普段の生活や仕事の中でついやってしまうのが「先延ばし」だ。この悪癖は、私たちの成功を阻む大きな要因のひとつでもある。そんな人生の大敵であり、私たちの自己実現を阻む「先延ばし」について語った不朽の成功バイブル『DOING IT NOW』がついに日本で邦訳される。今回は、その邦訳版である『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』から、「先延ばし」を打開するノウハウを紹介していく

「やめどき」を意識すれば、人生はもっとうまくいく

エドウィン・ブリス
アメリカの元経営コンサルタント。それ以前に新聞記者、編集者、上院議員秘書、ロビイストを経験。先延ばし癖と時間管理に関するセミナーを全米各地で開催して好評を博した。哲学、文学、歴史、心理学に造詣が深い。著書に『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』(ダイヤモンド社)などがある。現在、引退してカリフォルニア州で暮らす

 先延ばしの大きな原因の1つが「完璧主義」です。完璧主義は、2つの意味で先延ばしの原因になります。まず、失敗の恐怖のために身動きがとれなくなることです。多くの人は完璧でなければ失敗だと考えます。人びとは失敗したくないので、それを確実に避ける唯一の方法を選択します。すなわち、課題に取りかからないことです。完璧主義の1つのあらわれは、課題に取りかからないことだといえます。

 もう1つは時間管理とかかわっています。課題には取りかかるのですが、あらゆる部分を完璧に仕上げるために膨大な時間を費やすので、先ほどのパターンと同じくらい(またはそれ以上に)重要な課題に取り組む時間がなくなってしまうのです。

 もしあなたがミケランジェロで、システィーナ礼拝堂の天井画を描いているなら、それもやむを得ないかもしれません。しかしその場合でも、「ここにもう1人の天使を描き、エレミヤのあごひげを少し修正し、アダムのへそを消そう」と悩んだあげく、いずれ「もうこれで十分だから、そんなことをする必要はない」と決断しなければならないときが来ます。ミケランジェロ自身も「芸術をきわめる秘訣は、いつ切り上げるかを見きわめることだ」と言ったとされます。

 もちろんこれは、「最善を尽くさなくていい」ということではありません。もっときれいにできる家はたくさんあります。もっとうまく書ける手紙もたくさんあります。しかしだからといって、完璧を追求すると膨大な時間を空費することになり、ほかの活動をする時間が足りなくなります。時間を有意義に活用したいなら、「その時間でほかにどんなことができるか? それができなくなってもいいのか?」と自問しましょう。有名なジャーナリストのゲイル・シーヒーはこう言っています。

「精いっぱい努力したなら、これで十分だと思おう。自己肯定感が高まれば、これで十分だと思えるようになる。これで十分だと思えるようになれば、自己肯定感が高まる」